CNET Japanは2月18日、「CNET Japan Live 2016 Target 2020 ~テクノロジーがもたらすパラダイムシフト~」を開催した。同イベントでは、東京オリンピックが開催される2020年以降の未来をターゲットに、「Life・Work」「Makers」「Communication」「Service」4つのテーマで世の中の変革を議論するもの。当日は業界のキーパーソンが登壇し、さまざまなセッションが行われた。
本稿ではそのうちの1つ、「Eddystoneで始まるPhysical Webの世界~ビーコンテクノロジーのバショ・キカイ・ヒトへの応用」をレポートする。
本セッションに登壇したのは、株式会社リクルートテクノロジーズ アドバンスドテクノロジーラボの加藤亮氏。
加藤氏はまず、昨今のバズワードである「IoT(Internet of Things)」という言葉に着目。これを「Internet」と「Things」に分けて次のように定義する。
本セッションのテーマでもある「ビーコン」とは、そんなIoT分野で注目されるセンサーネットワークだ。この場合の「センサー」とは、周囲の情報(画像・音・温度・その他さまざまな情報)を機械が認識するデバイスのこと。
ここで取得した情報は、ビッグデータでの分析やコンテンツへの応用、あるいはマシンオートメーションのトリガーなどに使われる。マシンオートメーションのトリガーとは、「自宅に主人が帰ってきたらライトをつける」といったものだ。
周囲の情報を取得するセンサーとは逆に、情報を発信するのがビーコンである。例えば店の近くをユーザーが通るとクーポンを発行する…といったことが可能だ。ただし、ここで発信できる情報は比較的小さなものとなる。
加藤氏によると、IT業界においてビーコンはサービス開始のトリガーとして使うものと認識されているという。例えばAppleのiBeaconが有名である。しかし、IoT時代の今、このビーコン技術が改めて見直されているという。
そこで登場したのが、2015年にGoogleが発表したEddystoneだ。Eddystoneはビーコンの規格であり、オープンスタンダードを提唱している。iBeaconなどと同じく、Bluetooth LEのアドバタイジングパケットを利用する。
Eddystoneの振る舞いは厳密には3種類あるが、重要なのは次の2つ。「Eddystone-UID」と「Eddystone-URL」だ。「Eddystone-UID」はビーコンからFrameを定期的にブロードキャストする。スマホ側のアプリはFrameをスキャンするとNamespaceを見て自サービスのものかどうかを判断。近接を発見すると何らかのサービスを実行する。
例えば複数の「Eddystone-UID」を並べておくと、どのビーコンの横をユーザーが通ったのかなどの分析も可能だ。これにより、例えば客の店舗内移動などに対応したサービスや分析が行えるという。iBeacon的な用途もカバーしているといえる。
対する「Eddystone-URL」はNamespace&IDの代わりにURLを飛ばす。小さいパケットの中にURLをのせるために、例えば短縮URLを使うなどの工夫がなされている。これはPhysical WebにおいてUriBeaconと呼ばれていた仕様とほぼ同じである。
加藤氏によると、重要なのはこの2つのうち、どちらを飛ばすモードなのかだという。このうちのEddystone-URLによって実現するのがPhysical Webである。
例えばスマホを持ったユーザーがビーコンの横を通り過ぎると、ビーコンからURLが飛ぶ。複数のビーコンの横を通ることで、スマホは各ビーコンからURLを拾い、結果を画面にリストアップ。ユーザーはその中からほしい情報を見つけて、ウェブブラウザで表示するという流れだ。
コンテンツ例として考えられるのは、デパートのフロア案内や特設イベント会場の情報、バス停の時刻表やレストランのメニューなどがある。
「バス停に着いたら、次のバスがいつ来るか見たいし、レストランについたらメニューが見たいですよね。まさに今、その場所で重要な情報というのは決まっているんです」(加藤氏)
加藤氏によると、これは今までのITでカバーできていなかった領域なのだという。
「インターネットがすばらしいのは、情報をアップデートしておくと世界中から見られることです。しかし、ローカルな情報とは相性が良くなかった。たとえばローカルなパン屋が世界中に情報を発信しても集客できない。そこにお金をかけるなら看板にでもお金をかけた方が良かったりするんです」(加藤氏)
看板やポスター、パンフレットなど、アナログ媒体との方が相性のいいローカルコンテンツは確実に存在する。これをデジタル化できるのが、Physical Webが示す未来だ。
しかし、それだけならO2OブームやiBeaconと変わらないのではという疑問が生まれてくる。ここでキーワードとなるのが、「オープンスタンダード(標準化)」と加藤氏は語る。
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