スマートフォンを中心に、オムニチャネルやIoTなど次世代テクノロジを通じて生み出されるデジタルマーケティング戦略。そこにはアイデアやクリエイティビティが不可欠だが、それだけでは「これまでになかった体験」を提供することはできない。ユーザーに新たなエクスペリエンスを届けるために、欠かせない普遍性や本質とは何か。
この連載では、デジタルを活用したコミュニケーション施策を発信する「コードアワード」に寄せられた作品から、デジタルマーケティングの「未来」を拓く“ヒント”をお届けする。
クロックス・ジャパンでは、商品コンセプトである“圧倒的な軽さ“の体験を伝えるため、自動制御されたドローンが巨大なディスプレイ台にあるスニーカーを掴んで持ってくる「世界初!空中ストア」を、約1年前の2015年3月5~8日に、東京六本木ミッドタウンで開催した。
来店者が空中ストア内に設置されたiPadから、気になるスニーカーの色を選択すると、自動制御されたドローンが飛び立ち、指定された色のスニーカーを掴み、手元まで運んでくる仕組みだ。実際に試し履きや購入も可能なストアとしての機能も兼ね備えていた。
空中ストアを実現するために、スニーカーを掴むアーム付きドローン(アームは電磁石式)、ドローンの自動制御プログラムとオーダーシステム、100足が並ぶ高さ5m×幅10m×奥行き6mの巨大空中ディスプレイ台などをすべて独自で開発した。
開催の1カ月間前にウェブサイトを公開し、ドローンがスニーカーを持って飛行する動画や、オリジナルドローン開発のバックストーリーなどを公開した。また、空中ストアの開催期間中はYouTubeでライブ中継を実施した。
結果として、幅広い分野で社会に大きな変化をもたらすドローンという新しいテクノロジを活用し、世界で初めて「空中ストア」という全く新しい顧客体験を作り出した。また、ストアとしての実用的な機能を研ぎ澄ます設計としたことで、ドローンを活用した接客ビジネスにおける商用利用の可能性や安全性におけるリスク、技術面での課題を明らかにし、メディアを通して発信することに成功した。
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