社内用でも著作権問題クリア--素材の拡充進める「Adobe Stock」、4K映像も提供

 アドビシステムズは、2015年6月からストックフォトサービス「Adobe Stock」を提供。開始当時4000万点だった提供素材が2015年11月現在で4500万点まで拡大している。3月3日の会見で明らかにした。

 昨年、大騒動となった東京五輪エンブレム問題では、コンペ資料に利用した写真が海外のブログ写真を無断で使用していたことが発覚。公開の場ではなく、審査員向けコンペというクローズな場であったものの、無断で使用していたという事実が、デザイナーの信用を失わせ、エンブレム採用取り消しにつながっていった。会見では弁理士の栗原潔氏をゲストとして招き、素材写真利用での著作権法上の留意点を紹介し、こうした問題を起こさないためにも、ロイヤリティフリーのストックフォトサービスを利用することのメリットをアピールした。

 Adobe Stockは、新たに4K映像、素材を使ったグッズ販売なども可能となる「拡張ライセンス」の提供などサービスの拡充を進めている。東京五輪エンブレム問題が契機となって、これまではグレーゾーンだった「社内限定」といった場面でも「著作権的に問題はないのか?」という声が上がることが増えていくと見越して、安心して利用できるAdobe Stockをアピールしていく。

権利処理していない素材の利用はリスク

 会見では、弁理士の栗原氏が著作権法上の留意点を説明。混同して理解されていることも多い、日本と米国の権利制限規定に関する違いが解説された。

 日本と米国で共通しているのは、「著作物の利用には著作権者の許諾が必要」という点。一方、例外となる許諾なしに利用できるケースについては、日本と米国で違いがある。

テックバイザージェイピー 代表取締役 弁理士 栗原潔氏
テックバイザージェイピー 代表取締役 弁理士 栗原潔氏

 「日本は法文に規定されているかどうかによって例外として認められるかが決まる。一方米国では、公正な利用=フェアユースかどうかで柔軟にルールが決定する。日本でも、『これはフェアユースだから大丈夫』という人がいるが、日本ではフェアユースは認められていない」(栗原氏)

 米国ではグレーゾーンなものについては裁判が行われ、そこでの判断で決定されるため、世の中の変化に追随しやすい。一方、日本は、法文に規定されるまでは、裁判となれば法律違反とみなされることになる。

 「例えば検索サービスは、Googleのサーバ内に内容がコピーされるため日本では最近の法令改正までは厳密には例外にあたらない、法律違反という状況が続いていた。一方、米国は早い段階で裁判が行われ、例外に該当することが決定している」(栗原氏)

 日本での事例としては、五輪エンブレム問題以外にも、ストックフォトの販売会社が、著作権を保有するウェブ素材を許諾なく利用していたとして法律事務所を提訴。東京地裁で4月15日に確定した判決では、著作権侵害に加え、損害賠償請求も認められた。

 「この事件は大きな話題にはならなかったものの、実はウェブ制作者などに大きな影響を及ぼす裁判結果となっている。法律事務所側の未必の故意が認定され、原告側の過失・故意の立証ハードルが大幅に下がり、無償素材としてアップされていたものだから許諾は不要と思ったという“言い訳”が失当とされ、被告が法律事務所ではなくとも、ある程度経験をもったウェブ制作者であれば、利用する素材が著作権許諾を得たものであるかどうかの一定の注意義務を負うという判断が示された」(栗原氏)

 こうした事例からも「権利処理を行っていない素材の利用はリスクが高い」と栗原氏は説明。社内利用のように現実的に問題とされることが少ないケースであっても、「今までは大丈夫だったから大丈夫だろうと考えてしまうのは危険」と万が一の対策を取っておくべきだとアドバイスする。

 ストックフォトサービスは、こうした問題を回避できる。

 そもそも、ストックフォトはロイヤリティフリーで、低価格で写真などを利用できるサービス。同業他社を含め、別のところで同じ画像が利用されている可能性があるというデメリットがある(マイクロストックと呼ばれ、Adobe Stockはマイクロストックに分類できる)。これとは種類が異なる、独占的に該当画像を利用できる“マクロストック”もあるが、価格が高価になるというデメリットがある。

 ロイヤリティフリーとは使用期間、地域制限がなく利用できるものだが、無償で使えるわけではなく、著作権はあくまでも制作者が持っている。

 Adobe Stockは社内で著作権の問題がない画像を低価格で利用できるストックフォトサービス。素材提供者(コントリビューター)とストックフォト利用者をつなぐマーケットプレイス型であり、使用期間、使用地域の制限はない。デザインとして使用することは可能だが、ロゴマーク、トレードマークとして使うことはできない。

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