朝日新聞は2月25日、ベンチャー企業を支援する「朝日新聞アクセラレータープログラム(Asahi Shimbun Accelerator Program:ASAP)」の第1回デモデイを開催した。同日に成果を披露した6チームには、朝日新聞グループとの事業提携や協業などを視野に入れ、数百万~1000万円の出資を検討するという。
2015年7月に発足したASAPでは、一般から募集したベンチャー企業を、サービスの新規性や実現可能性などの観点で審査し、同年9月に採択チームを決定。採択された6チームは、東京・渋谷の朝日新聞社メディアラボ渋谷分室で、有識者やメディアラボのメンバーから、ビジネスやメディア運営のノウハウの提供を受け、4カ月かけて新しいサービスとビジネスモデルの構築に取り組んできたという。
同日のデモデイでは、朝日新聞 代表取締役社長の渡辺雅隆氏が登壇。同社では、2013年にメディアラボを立ちあげ、社員からの提案やアイデアをもとに、読者の人生を本にしてくれる「朝日自分史」や、クラウドファンディングサイト「A-port」などの新サービスを生み出してきたと説明し、「新聞社の既成概念を突き破るような新しいビジネスを手がけたい」と意気込みを語った。
「メディアの役割は問題点を指摘して終わるだけではない。今日よりも明日が少しでも良くなるように、よりよい明日があるように、私たちが社会の課題を深く掘り下げ、そして皆さんと一緒に考えて解決策を探っていきたい。その先頭に立つのがメディアラボであり、その最前線の試みがこうしたアクセラレータープログラムなどだと思っている」(渡辺氏)。
ここからは、同日にプレゼンテーションした6チームのサービスを紹介する。
「Palmie(パルミー)」は、イラストや漫画の描き方を動画で学べるサービスだ。レベルに合わせた9コースの学習カリキュラムが用意されており、100本以上の動画講座を無料で視聴できる。また、イラストを投稿してユーザー同士でコミュニケーションすることも可能だ。
現役アニメーターの井関修一氏など、著名なイラストレーターや専門学校の講師から有料で授業を受けられるメニューもある。授業料は1回90分の授業が5回ほどで約2万円。講師にリアルタイムに質問したり、添削してもらったりすることができる。同等の時間で10~50万円の費用がかかる専門学校のオンライン授業と比べると、安価でありながら高品質な授業を受けられるとしている。
2014年12月にサービスを開始し、2016年1月時点で動画の再生回数は200万回を超えたという。今後については、2015年度は数本だった生放送授業を、2016年度は150本に、2018年には1000本に増やすとしている。また、2016年度に2.3億円、2018年度に28億円の年商を目指すとした。
「WEDDIT(ウェディット)」は、会場や料理、ドレス、フラワーなど、結婚式に必要なものを自由に組み合わせて、適切な料金で結婚式をあげられるサービス。従来の結婚式場では、提携している会場しか使うことができず、担当者も新人やベテランなどによって質にバラつきがある。さらに、オプションや持ち込み料などで見積もりが平均100万円を超えることが一般的だという。
WEDDITでは、自社で会場を持たず、空間コーディネーターや装飾用の大道具のレンタル企業と提携することで、さまざまなスペースをウェディングに活用している。また、各分野のプロフェッショナルに依頼できるため安心なほか、持ち込み料もすべて無料だという。同社では、各プロフェッショナルから新郎新婦が支払った金額の15~30%を成果報酬料として徴収する。
ユーザーは、招待予定人数や利用予定時間を入力して、気になるスペースやプロフェッショナルを選択。結婚式のテーマや要望を入力して、プランナーに相談する。プランナーとはLINEやSkype、メールなど、ウェブ経由で打ち合わせできるようにする予定だという。2015年12月21日にサービスを開始し、すでに3組(1組あたり300万円)の申込みがあるそうだ。
「ReCross(リクロス)」は、余った紙を売買できるマーケットプレイスだ。紙の流通過程では、印刷会社などが希望する量と、製紙会社に発注できる最小ロットの単位が合わないことが多いという。たとえば、1万メートル以下では販売していない製紙会社の紙を購入し、3000メートルしか使わなかった場合、7000メートルも余ってしまう。
他の製品に転用できればいいが、紙の雑誌などは厚みや質感がそれぞれ異なるため難しいという。このため、流通業者に多くの紙の在庫が滞留してしまっているという課題がある。余った紙は、一定期間後にリサイクル業者に安価に買い取られるか、有料で廃棄処分されるそうだ。
また、紙は製紙会社が卸商に販売して、そこから各印刷会社のもとに販売されるが、価格競争が起きないように製紙会社や代理店によって商流が調整されており、紙が自由に売買できない現状があるという。卸売商も横並び体質で、相手企業の販売ルートを侵すことを避ける傾向にあるそうだ。
そこで、ReCrossでは余っている紙の在庫情報を登録して、欲しい分だけ匿名で売買できるようにした。チャーター便で届けるため、お互いの情報を知られることなく売買できる。リサイクルは原価の20%ほどしか得られず、廃棄処分では逆に15%もの費用が発生するが、ReCrossであれば原価の50%で売ることができるそうだ。現在、取引き企業数は110件で、在庫情報は230トン。このうち3.5トン分の取引きが成立しているという。
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