2月18日に開催された、2020年を見据えたテクノロジのカンファレンス「CNET Japan Live 2016 Target 2020」で、中古不動産情報サービスの「IESHIL(イシエル)」を運営するリブセンスが、「REAL ESTATE TECH」をテーマに講演した。
ITの力で不動産売買の流動性を高めたり、一歩進んだ不動産情報を提供したりできるようにするREAL ESTATE TECHは、米国では数々のスタートアップベンチャーが生まれている分野だが、日本では旧態依然とした不動産業界の慣習から脱却できていないと同社は指摘。企業と顧客の利益の観点から、日本においてもREAL ESTATE TECHの本格展開に向けた努力が必要だと訴えた。
「『REAL ESTATE TECH』ビッグデータ活用による国内不動産の未来」と題された同セッションでは、ビッグデータ解析のクラウドソリューションを提供しているトレジャーデータの堀内健后氏と、同社の仕組みを活用している中古不動産情報サイトIESHILのユニットリーダーである芳賀一生氏が登壇した。
トレジャーデータは、米国、韓国、日本に拠点を構え、顧客自身のウェブサイトのログなどのデータをクラウドで集約・解析し、顧客が分析に利用しやすい形で情報を得られるようにする仕組みを提供している。時間とコストをかけることなく導入できる月額課金型のサービスで、採用企業は国内大手をはじめ200~300社に達しており、「企業がデータ解析の負担なく、ストレスなく事業ができるように」(堀内氏)することをコンセプトとしている。
このクラウドソリューションと、その上で動作する機械学習ライブラリ「Hivemall」をIESHILで活用しているリブセンスでは、各地域における中古不動産の部屋ごとの価格推定、地域ごとの価格の推移などを収集するのに役立てている。
また、高層マンションにおいて比較的割安な階層はどこか、割安な最上階が手に入るのは何階建てか、といった購入側にとって気になるポイントのほか、価格変動の少ない地域、不動産を高く売りやすい時期など、売却側が知りたいポイントについても、トレジャーデータの仕組みを用いて収集。自社でデータ解析のシステムを用意するよりも効率よく運用できるメリットを強調した。
このような、従来にない不動産売買・情報提供サイトをなぜスタートさせたのか。そして、日本におけるREAL ESTATE TECH分野の発展に向けてはどういった課題があるのか、リブセンスの芳賀氏が詳しく解説した。
同氏によれば、現在国内で中古住宅の“空き家”の問題が露見し始めており、すでに13%の物件が空き室になっているという。新築住宅は次々と建設されている一方で、人口は減少傾向にあることから、空き家の問題はますます深刻になると見ている。国内では全体の流通シェアにおける中古物件の割合が14.7%しかなく、米国の90.3%や英国の85.8%と比べ大幅に“新築人気”が高いことを示した。
日本と欧米では、売買取引の商慣習についても大きく異なると芳賀氏は話す。日本はいわゆる“両手取引”で、不動産を売る側と買う側の両方から売買代金の3%+6万円を上限に仲介手数料として回収する仕組みだ。しかし、米国では“片手取引”、基本的には売り主のみから最大6%程度を回収するビジネス構造になっている。
不動産を購入する側の心理的な面でも、日本では課題が多いとしている。まず、住宅を取得した際に適用される税金控除など、行政による支援策はあるものの、それでもローンや資金計画に不安を抱く人が少なくない。また、不動産を扱う店舗を訪れた際、店員らによる執拗な営業行為がないか、相談したらその場で購入しなければいけない気分にさせられるのではないか、といった不安も大きいとしている。
ITの力で“見える化”を進め、こうした営業行為に対する不安を払拭するとともに、専門的な情報を分かりやすく伝えることで、ユーザーの不安を軽減させるべくスタートさせたのがIESHILだと芳賀氏は語った。
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