2月18日に開催されたイベント「CNET Japan Live 2016 Winter Target 2020」の2つ目の基調講演は、スマートフォンアプリで世界的にプレイされている位置情報を利用したゲーム「Ingress」のビジネス展開を紹介する「Ingressのビジネス戦略--仮想現実プラットフォームが描く未来」。
Googleから独立してIngressを開発・運営するNianticの日本法人、ナイアンティックの代表取締役社長である村井説人氏が、テクノロジーで世界を変えつつ継続的な事業として成立させるための事例を、具体的に説明した。村井氏はこれまで、Ingressのビジネス面、とりわけ企業スポンサードを一貫して手がけてきた。
そもそもIngressを開発したのは、Googleの社内ベンチャーであるNiantic Labs。中心人物は、Googleが買収し、「Google Maps」「Google Earth」へとつながるKeyholeにいたJohon Hanke氏だ。同氏は、Google Mapsの利便性を高め次世代へ発展させていく手段として、Ingressを考案した。Ingressにかける想いやこれまでの経緯などは、「特集:What's Ingress ?--見えてる世界だけがすべてじゃない」を読まれたい。
ゲームではあるものの、家のなかでPCやゲーム機の前に座り続けるのではなく、外へ出かけて冒険してもらいたいと考えたHanke氏。「自分の周りに何があるのかをもっとよく知る。自分の足で歩いて、自分の目で発見する。自分の身の周りを幸せにする。それが世界中で起これば、世界はよくなる」という考えを、Ingressで具現したわけだ。
このような視点から実際の行動へ移るHanke氏を、村井氏は「なんと視座の高い人だろう」と評した。そして、この視座の高さで人を幸せにしていき、これをモチベーションに仕事を進めると述べた。
スマートフォンのアプリでプレイするIngressだが、一体どのように現実の世界を改善できるのだろうか。その秘密は、以下に示すIngressの4原則にある。
Ingressは、Google Mapsをベースとしており、実在する場所や物を「ポータル」に設定している。つまり、全地球という現実の全世界がゲーム板なのだ。「エージェント」と呼ばれるプレーヤーは、スマートフォンが接点となり、拡張現実(AR)を通して世界を見たり、世界に働きかけたりできる。
Ingressで遊ぶには、実際にポータルまで行って何らかのアクションをしなければならない。ポータルは世界中の街にたくさん設定されているため、旅行や出張で訪れるだけでなく、通学や通勤、客先訪問といった毎日の生活のなかで寄り道をして少し余分に歩くことになる。Ingressが運動不足の解消に役立つゲーム、と言われるゆえんだ。
Hanke氏は、Ingressを知的探究心が刺激されるゲームにしたいと考える。「何度も通りがかっているのに気付くこともなかった、街や地域のすばらしい小さな隠された場所、秘密を発見してほしい」ことから、ポータルは歴史的な場所、公共の場所にある芸術作品などに設定される。こうして、ローカルな地域、コミュニティに気付いてもらい、かかわることを促進させる。
Ingressはオンラインコミュニティだけでなく、ポータルやイベントでの出会いを通じて、ほかのエージェントとリアルにコミュニケーションできる。ポータルとポータルを結ぶ線は国境を越えて引くことが可能で、国や地域、宗教、人種といった枠組みを超越した交流が実現される。さらに、他者と力を合わせ、協力してミッションを遂行する必要があるため、平和な世界を作り上げることになるだろう。
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