コンピュータの計算能力が飛躍的に向上し、100億人分の知能を持つAI(人工知能)が誕生するといわれるシンギュラリティ(技術的特異点)をテーマに、「シンギュラリティサロン」の公開講演会がグランフロント大阪・ナレッジサロンで開催された。シンギュラリティサロンでは、講演会や勉強会を定期開催する活動を2015年から続けている。
今回は、理化学研究所・生命システム研究センターチームのリーダーをはじめ、全脳アーキティクチャ・イニシアティブの理事と副代表などさまざまな肩書きを持つ高橋恒一氏が「人類を再発明するのに必要なこと」をテーマに、現在のシンギュラリティを取り巻く動きはどのようなもので、そこに関わっている人たちがどのような研究開発を行われているかなどが紹介された。
シンギュラリティを提唱するアメリカの科学者レイ・カーツワイルは、2045年にAIが人知を超える爆発的な進化を起こすとしているが、それについて日本では、総務省の情報通信政策研究所が「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会」の報告書で「2045年には部分的に人間より優れたAIが登場し、やがては人間を越える知識を持つAIが実現し得る」と公式な見解を発表している。
実現には言葉と次に生命の壁があり、本能などが備わらなければ人間に近いものにはならないという意見もあるが、高橋は専門家への聞き取りを元に、2030年が鍵になるのではないかという意見を述べている。
理由としては、課題であったスパコンの熱処理問題や電力効率が2020年頃には解決され、ムーアの法則を超える可能性が見えてきたこと。コンピュータだけでは無理と言われていた科学実験が今ではできるようになったこと。また、囲碁もコンピュータが勝つのはあと10年かかると言われていたのにあっさり勝ってしまい、できないと思っていたものが意外に早くできるようになり、AIも一気に進化する可能性が見えてきたことなどを挙げている。
こうした大量の計算を得意とするAIは特化型AIと呼ばれ、技術面で解決できる点が多い。ただし、本当にAIを進化させるのはAGIと呼ばれる汎用人工知能で、その開発には、G=遺伝子、N=ナノテクノロジー、R=ロボット工学という3つの分野が相互に影響しあっている。つまり、技術以外での動きも合わせてシンギュラリティがいつやってくるのかを考えなければならないというということである。
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