大人世代が検索サービスを使う場合、どんなサービスを使っているだろうか。StatCounterによる日本の検索エンジンシェアを見てみると、執筆現在でGoogleが61.9%でトップ。次いでYahoo!の31.29%が続き、Bingは6.16%となっている。そのほか、飲食店を調べるなら「食べログ」や「ぐるなび」、化粧品を調べるなら「@cosme」などと使い分けている人も多いだろう。
ところが10代はそうではないようだ。10代の検索行動が変わってきていることはご存じだろうか。最新の検索行動の傾向と共に、問題点についても考えていきたい。
若者を対象にしたLIDDELL調べ(2016年2月)によると、「最近検索によく利用する検索サービスはどれか。どのような時に利用するか」という質問に対して、非常に興味深い回答が得られた。Googleが33%でトップなのは大人世代と変わらないが、次いでTwitter(31%)、Instagram(24%)、Yahoo!(12%)となっている。なんと、GoogleとTwitterは利用率がほぼ同じ。InstagramはYahoo!の2倍となっているのだ。
どのような時に利用するかという質問に対する回答にも、10代の特徴がよく現れている。GoogleやYahoo!は、主に「分からないことを探す時」という理由で使われていた。Googleは、さらに「正しい情報を探す時」という理由で使われている。
気になるTwitterだが、「速報などを知りたい時」「検索エンジンでもヒットしない情報を探す時」となっていた。ニュース速報、ライブ情報、ゴシップ・トレンドなど、最新の情報を探す時に使っているのだ。新作アプリやリアルタイムネタなどは検索エンジンではヒットしないため、Twitterが向いているとのこと。大人世代も、「山手線 遅延」「地震」などでリアルタイム情報を得ているという人もいるのではないか。
「渋谷 ひま 遊び」など居場所に関する検索は、特に10代らしい使い方と言える。10代は、仲間がしていることが気になる傾向が強い。検索結果で見つかったことを遊びの参考にしたり、合流できそうであればするというわけだ。
もう一つ特徴的なのが、Instagramだ。10代は主に画像を通して情報を得たい場合、つまり髪型や洋服、ネイル、メイク、食べ物、観光地を探す時に利用するという。髪型や洋服、ネイルやメイクなどは画像による情報取得、つまり「可愛い」などの直感的な取捨選択が可能だ。
一方、飲食店や観光地ではハッシュタグが活用されている。飲食店で「#カフェ○○ #おすすめ」など、検索結果で現れた結果を見て注文を決めたり、観光地でも「#観光地名」で検索して情報を得てから訪れるというのだ。10代では特に、周囲のお勧めに強い影響を受ける傾向にある。信頼していたり憧れていたりする人の投稿内容に影響を受けて行動しているのだ。
米国にも目を向けてみよう。米Northstar Researchの調査(2014年10月)によると、1日1回以上音声検索を使うと回答した人の割合は、大人は41%だったのに対し、10代は55%いた。10代は、音声検索という新しい検索方法を頻繁に使う傾向にあるのだ。音声検索は一般的には電話をかける時や行き方を調べる時によく使われているが、10代は宿題で使ったり(31%)、テレビを見ながら使ったり(59%)、お風呂でも使っている(22%)。
10代はスマホネイティブであり、日本でも音声検索を利用する割合が高いようだ。テレビやお風呂など、主に手や目が離せない時に便利に音声検索を活用しているということになる。
10代は、確かに検索サービスは大人以上に使いこなしているかもしれない。しかし、たとえば以前ご紹介したとおり、検索結果を疑わずにそのまま信じる傾向にある。しかも、それだけではない。
米市場調査会社GfKが米国の13~18歳の若者を対象に実施した調査(2015年6月)によると、回答者が医療・健康情報を得る情報源は、両親(55%)、学校の授業(32%)、医師・看護師(29%)に次いで、インターネット経由(25%)となっていた。回答者の44%は複数の情報源を見て情報を得る一方で、50%は検索結果の1件目を閲覧し、そこで満足する情報が得られた場合は、それ以外のサイトは閲覧していなかった。
医療・健康情報に関するネットの情報の多くは、医療関係者ではなく、一般人が入力している。たとえば、さまざまな検索結果で上位にくることが多いWikipediaは多くの人が編集に携わっており、一部は恣意的だったり不正確だったりすることが知られている。当然、重大な間違いが混じっていることも少なくないため、ネットの検索結果を鵜呑みにするのは非常に心配な行動と言えるだろう。
10代の子達は、ソーシャルメディアにおける検索結果も鵜呑みにする傾向にある。ソーシャルメディアの情報源と言えば、友人だったり、ネット上の匿名の人物だったりすることが多い。高校2年女子A子は、Twitterで好きな男性タレント名を検索したところ、「男性タレントにひどいことをされた、ひどいことを言われた」という旨のツイートを複数発見。「好きだったのにそんな人だと思わなかった。すっかり嫌いになった」と答える。ツイートがデマかもしれないと考えもせず、信じ込んでいるのだ。
中学2年男子B夫は、LINEグループに投稿されていた情報に驚いた。「C先生は昔ヤンキーだったらしい。中学生の頃から万引きしたり、お酒や煙草やったり、ワルかったらしいよ」。C先生はB夫の所属する部活の顧問教諭だ。その情報を信じたB夫は、部活の先輩後輩だけでなく、保護者にもしゃべってしまった。保護者の間で問題になって発覚したことによると、その噂はただのデマだった。B夫は、「親しい友人からきた情報だから疑いもせずに信じた。まだ本当は先生はヤンキーだったかもしれないと思っている」と答えている。
10代において、情報との接し方が変わってきている。検索の仕方や利用するサービスが変わることは、時代に合わせているという意味で間違っていない。しかし、10代は「友達」の言葉に影響されやすく信じやすい。情報の真贋を見極める力がとても乏しいため、鵜呑みにして軽挙妄動に走ることがないよう、周囲の大人が見守る必要があるのではないだろうか。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」