ソニーが空間に溶け込む家電をテーマに展開している「Life Space UX」シリーズ。今までの家電と異なるのは、LED電球スピーカや手のひらサイズのプロジェクタなど、そのデザイン性だ。今までにない家電に果敢に挑戦するLife Space UXシリーズは、どんな背景から生まれ、どういった経緯で商品化されたのか。2月に発売されたポータブル超短焦点プロジェクタとグラスサウンドスピーカの設計開発担当者が、発売記念イベントでその開発ストーリーを話した。
ソニーデバイスソリューション事業本部新規事業部門ポータブルプロジェクタモジュール事業室統括課長としてポータブル短焦点プロジェクタ「LSPX-P1」の開発を手がけた松田幹憲氏は「高画質を実現しながら、省スペースかつバランスの良いプロジェクタに仕上げる必要があった」と開発当時を振り返る。
超短焦点での投映は、4K超短焦点プロジェクタ「LSPX-W1S」でも実現している技術だが、そのままではこのサイズに落とし込めない。「4K超短焦点プロジェクタに近い技術も採用しているが、このサイズで実現するために専用のものを採用している」と小型ならではの技術が盛り込まれていると話した。
しかしコンパクトサイズだからといってすぐに商品化が決まったわけではない。ソニーの代表執行役社長兼CEOである平井一夫氏にLSPX-P1のコンセプトモデルを見せたのは、ソニー社内で開催された夏祭りの日。「プロトタイプをプレゼンした時、1週間後に社長が来訪することを知らされ、その場で1週間後にプレゼンすることを決めた」という。松田氏も「まさか夏祭りの日にやるとは思わなかった」と予想外だったと話す。
その時はすぐに製品化が決まらなかったものの「ずっと粘って製品化に持っていった」(松田氏)とのこと。その後Life Space UXのコンセプトと出会うことで、ポータブル超短焦点プロジェクタが生まれた。
プレゼン時には目立つようにと若手のスタッフがRGBのTシャツを着て、平井社長にアピールしたエピソードも明かした。商品のコンセプトと積極的かつ粘り強いアピールが商品化に結びついたという。
松田氏は「身近な存在、愛着のある商品になってほしいという思いから、ボタンを減らし、置いただけでピントが合う使いやすさも取り入れた。ストレスなく画面を出せることで身近に使ってもらえれば、我々開発者もうれしい」と話した。
一方、グラスサウンドスピーカの「LSPX-S1」は、8年の時を経て新たな形に生まれ変わったという珍しい経緯を持つモデルだ。元になっているのは2008年に発売された「Sountina(サウンティーナ)NSA-PF1」。全長は約1.8mの大型モデルをデスクトップで使える高さ303mmにまでダウンサイジングした。
設計開発を手がけた、ソニービデオ&サウンドプロダクツ V&S事業部サウンド開発部2課アコースティックマネージャーの鈴木伸和氏は、Sountinaの開発も手がけた人物。「サウンティーナは音の噴水、サウンド+ファウンテンから名付けた。当時、開発のキーワードに挙げたのはワンスピーカ、360度に広がる、透明であることの3点。既存技術では実現できなかったが『バーティカル ドライブ テクノロジー』を開発することで、有機ガラス面全体から音を出すことに成功した」と当時を振り返る。
LSPX-S1では、さらなる高音質化と低歪み、高応答性の加振器で加振することにより、人の細かな息遣いや楽器の質感描写に優れる「アドバンスド バーティカル ドライブ テクノロジー」を採用しているという。
実はワインボトルサイズに仕上げているLSPX-S1。テーブルにおいてもすっと溶けこむのはそうしたなじみやすいサイズ感を採用しているからかもしれない。元々インテリアに興味があったという鈴木氏。「インテリアに溶け込むような音とデザインを融合したようなスピーカを作りたかった」という8年前のイメージをLSPX-S1で見事に具現化した。
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