米国のセントラルフロリダ大学、中国の西安近代化学研究所、日本のDIC(旧社名は大日本インキ化学工業)が、極端な低温や高温でも表示がぼけたり反応が遅くなったりしない新たな液晶ディスプレイ(LCD)用の液晶素材を共同開発した。研究チームは、自動車に搭載されるさまざまなデバイスに応用可能としている。
広く使われているLCDは、高温環境だと表示がぼやけてしまい、低温環境だと動きが悪くなって反応速度が低下する。そのため、寒冷地から砂漠まで幅広い温度の環境で使われる車載デバイスの表示装置として、現在のLCDは十分な性能がない。
研究に参加したセントラルフロリダ大学のShin-Tson Wu氏は、「自動車のエンジンをかけたときに、真冬だろうと真夏だろうと、極端な温度に影響されず正常にカーナビが動いていると確認したいものだ」と述べる。
Wu氏らのチームは液晶素材のこうした弱点を克服する研究に取り組み、新たに3種類の液晶素材を見つけ出した。新素材は、氷点下20度から100度の範囲でネマチック状態を取り、従来よりもはるかに広い温度範囲で素早く反応するとしている。
具体的には、氷点下20度や同30度といった低温環境でも10msほどの応答時間で表示ピクセルの状態を変えられるという。ちなみに、欧州の自動車向け規格では、氷点下20度だと200ms、氷点下30度だと300msで応答するよう求めており、今回の新素材は10倍高速といえる。
なお、新素材の詳細は、「High performance liquid crystals for vehicle displays」として米国光学会(The Optical Society:OSA)のウェブサイトに掲載されている。
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