東芝が発表した2016年3月期第3四半期累計(2015年4~12月)業績は、売上高が前年同期比6.4%減の4兆4216億円、営業損益は前年同期の2017億円の黒字から2295億円の赤字に、税引前損益は前年同期の1881億円の黒字から1610億円の赤字に、そして当期純損益は1072億円の黒字から4794億円の赤字となった。
これを受けて、通期の業績見通しを下方修正。売上高は6兆2000億円と据え置いたものの、営業損益は12月公表値から900億円減の4300億円の赤字、税引前損益は1000億円減の4000億円の赤字、そして、当期純損益は1600億円減の7100億円という大幅な最終赤字見通しに修正した。
代表執行役社長の室町正志氏は、「前回の公表から1カ月あまりで大きな修正となったことを深くお詫びする。だが、今回の修正は、2016年度のV字回復への決意と捉えてほしい」と語り、「金融機関からも、2015年度中にすべての膿を出し切ってほしいとの要請があった。各事業部もそれを前提として検討した結果」と説明した。
さらに同社では、緊急対策として、新たな役員の報酬返上や役職者の給与を減額。2月から室町氏は引き続き90%の報酬返上、副社長はこれまでの30%から40%に返上額を引き上げ、専務、上席常務、常務も20%から30%に引き上げたという。そして、課長以上の役職者の給与を減額することも発表。社員にも痛みを伴う構造改革に着手することになる。課長級では月額1万円の減額になる。
すでに公表している「新生東芝アクションプラン」についても追加施策を発表。ハードディスク事業については、エンタープライズ分野に開発リソースをシフトする一方、国内150人の人員を再配置、早期退職制度を実施。ヘルスケア事業については、3月末にヘルスケア社を廃止するとともに、国内で約90人を再配置、早期退職制度を実施する。送配電事業は、海外拠点の閉鎖、縮小を実施することを発表した。
「東芝再生のために課題を抱えている事業については、構造改革などの必要な措置を2015年度中に実施する。今後の成長に向けためどをつけるために、2015年度中に最大限処理したいと考えた。新生東芝アクションプランを完遂することで、東芝グループが新しく生まれ変わり、すべてのステイクホルダーから再び信頼を得られるよう、引き続き先頭に立って全力を尽くす」
新たな事業ポートフォリオと今後の成長戦略を含む全社の中期経営計画は3月に発表する予定だという。
会見では、白物家電事業とPC事業の再編についても言及した。
室町氏は、「公表している構造改革を確実に実行しつつ、他社との事業再編に向けた検討を加速させている。売却価格の交渉にまでは至っていないが、2月末までにはなんらかの方向性を伝えたい」とし、この1カ月で再編の道筋に決着をつける姿勢を示した。
「今後は、全員が移籍なのか一部が移籍するのかという交渉になってくるだろうが、できれば居抜きで移籍してもらいたいと考えている」と、事業そのものを完全売却する方針であり、「東芝メディカルシステムズの売却に比べて売却益は少ない。期待はしていない」
だが、その一方で、白物家電事業では、「白物家電事業の売却先として、シャープは選択肢のひとつ」と認めながらも、その前提となっている産業革新機構の支援提案の可能性が低くなっていることを考慮し、「ディールが変われば、海外企業への売却も選択肢のひとつに入る」とも語る。中国企業への売却交渉も可能性として再浮上してきたと言えそうだ。
PC事業については、「一時は海外メーカーとも話し合いをしたが、今は、海外メーカーへの選択肢の可能性は低くなっている」と述べ、富士通などの国内PCメーカーとの再編が有力であることを示した。
電子デバイス事業は、「終息や撤退を表明している白色LED、CMOSセンサ以外の事業は売却したり、事業撤退したりすることは考えていない。特にディスクリート半導体、車載・産業向けシステムLSIは、事業を継続していく。全力で事業を立て直す」と語った。
2016年3月期第3四半期累計のセグメント別業績は、電力・社会インフラの売上高が前年同期比1%減の1兆3398億円、営業損益は前年の430億円の黒字から1026億円の赤字。コミュニティ・ソリューションは、売上高が2%増の9929億円、営業損益は827億円減の635億円の赤字。
ヘルスケアの売上高は4%増の2988億円、営業損益は64億円減の68億円。電子デバイスの売上高は7%減の1兆2126億円、営業損益は1694億円減の234億円。ライフスタイルの売上高は27%減の6444億円、営業損益は282億円減の668億円の赤字。その他事業の売上高は8%減の3381億円、営業損益は21億円増の27億円となった。
ライフスタイルでは、テレビとPCなどの映像事業が販売地域の絞り込みにより大幅な減収になったほか、為替も影響。為替影響を除いた実質売上高は前年同期比30%減になっている。
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