KDDIは1月27日、大型の物流拠点「KDDI東日本物流センター」を神奈川県の橋本に新設して運用を開始した。総床面積は約5万400平方メートル。ヤマトホールディングス(ヤマト)の輸送ネットワークや、傘下のヤマトロジスティクスが提供するクラウド型のピッキングシステム「FRAPS(フラップス)」を導入することで、auショップで注文された商品などのスピーディな配送を目指す。
KDDIでは、スマートフォンのアクセサリーを始め、auショップで取り扱う携帯電話の周辺商材が増加しているという。2012年には月間183万個だった移動機・周辺機器の出荷量が、2015年には月間227万個まで拡大しているそうだ。また、同社は2015年12月からショップで日用品を注文できる「au WALLET Market」を全国で展開しており、累計会員数は100万人を超えているという。そのため、今後はさらに配送量が増えることが見込まれる。
そうした状況がある中で、これまでのKDDIの物流には3つの課題があったという。1つ目は、ショップにおける配送業務の負荷だ。従来は、ショップで1度に複数の商品をまとめて注文したにも関わらず、それぞれ異なる物流拠点からスマートフォンやアクセサリーが届くため、スタッフは何度も受け取り対応をしなければならなかった。
2つ目は、物流拠点が分散していること。2014年度末時点で全国に83カ所の拠点があり、輸送の効率・能力の向上が求められていた。そして、3つ目が物流センター内での出荷作業の効率が悪いこと。これまでは、人が台車を押しながら紙に書かれた商品を棚から取っていく「非常に前時代的」(KDDI理事 購買本部長の赤木篤志氏)な作業をしており、早急に改善する必要があったという。
これらの課題を解決するために新設された物流センターは、分散された物流拠点を統合し、最新の物流システム(マテハン機器)を採用。可動式ラックを並べたロールボックスパレットを活用し、人が移動しなくても定位置でピッキングできるシステム「FRAPS」と、同一配送先の箱に複数の種類の商品を同梱することで、宅配便個数を減らせる「マージソータ」を導入した。これにより、ピッキングできる商品量は2倍を超え、入荷から出荷までの負担を約3割軽減できるとしている。
また、橋本に新設されたKDDI東日本物流センターは、ヤマトの厚木ゲートウェイに隣接しており、一体運用される。今後は、2016年10月に完成する中部ゲートウェイ、2017年11月に完成する関西ゲートウェイの間で多頻度にトラック輸送することで、主要都市間での商品の当日配送を実現していきたいとした。2017年には西日本にも同様の物流センターを構築したいという。
同日の記者説明会で登壇した、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は「ヤマトの全国をカバーする最新の物流ネットワークに当社の物流センターをつなぎこむことで、本当に多量のものをリアルタイムに配送する仕組みを作り上げられる」と期待を寄せた。
なお、KDDI東日本物流センターには冷蔵設備がない。そのため当初は、携帯電話や周辺アクセサリーなどの電子機器のみの配送となるが、ヤマトの厚木ゲートウェイと連携することで、au WALLET Marketで取り扱う生鮮食品の配送なども検討していきたいとしている。
ヤマトでは、宅急便ネットワークにグループ各社のさまざまな機能を組み合わせて、付加価値の高い物流サービスを実現する「バリューネットワーキング構想」を掲げている。具体的には、同社が提携企業の家電の修理や、医療用品の洗浄なども請け負うことで、トータルのスピードが上がり、かつローコストを実現できるとしている。
同社代表取締役社長の山内雅喜氏は「KDDIから物流革命に取り組むとご相談を受けた。FRAPSという特許を持つ新たな仕組みを核に、KDDIの物流革命をお手伝いする。宅急便は個人宅のイメージが強いが、これからはバリューネットワーキング構想のもと、企業間物流でも価値を高めたい」と語った。
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