NTTドコモとNTTドコモ・ベンチャーズは1月21日、訪日外国人向けサービスを展開する企業をつなぐ、インバウンドマッチングイベントを開催した。ドコモと社外の企業とのアイデアを組み合わせることで新たな価値を創りだすことを目的としたプログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」が主催している。
イベントの冒頭では、NTTドコモ・ベンチャーズ取締役副社長の秋元信行氏が挨拶。ドコモ・イノベーションビレッジではこれまで、NTTグループとシナジーの高いベンチャー企業との“協創”を目的にドコモ側からテーマを出題してきたが、今回のイベントでは、事業会社と事業会社や、ベンチャー企業とベンチャー企業などの協創の可能性についても、広く模索していきたいと語った。
イベントでは、さまざまなアプローチでインバウンド事業を手がける事業会社とベンチャー企業10社が、自社のサービスや商品を紹介した。
訪日外国人向けのウェブマガジン「MATCHA」は、首都圏だけでなく地方も含めた日本の文化を9カ国語で海外に発信している。飲食店の情報なども紹介しているが、たとえば交通ICカード「Suica」の作り方や、Wi-Fiの設定方法などのハウトゥー記事も掲載。また、記事を読みながら日本語を勉強できるよう、漢字などにふりがなをふった「やさしい日本語」の記事も用意した。
現在は月間100万PVで、世界211カ国からアクセスがあるという。アクセス上位は台湾、インドネシア、米国など。すでに東急ハンズや、グーグル、パルコ、環境省、愛知県、佐賀県などと組み、店舗や各地の魅力を発信する記事を制作しているという。今後は、ユーザー参加型メディアを目指すとともに、自治体とのネットワークをさらに構築したいとしている。
秋葉原など、訪日外国人に人気なエリアに総合免税店を出店しているラオックス。同社は2009年から事業を開始し、2014年に黒字化を達成。現在は、越境ECをはじめグローバル化に向けた取り組みを進めているという。同社のインバウンドマーケティングのキーワードは、(1)訪日前・中・後を意識した広告施策、(2)メーカー共存、(3)PRバイラル効果の3つだ。
ラオックスのオウンドメディアとウェブ広告、さらに商品カタログなどを活用したメディア展開をしているほか、クルーズ船の船上イベントで訪日外国人の富裕層向けにラオックスの商品を紹介するなどしている。またラオックスの店舗には多くの中国人旅行者が来店することが強みだが、1社ではエリアプロモーションに限界があることから、今後は各エリアで他社との共同プロモーションを展開したいとしている。
エニドアは、複数の言語を話せるバイリンガルに、多言語化やローカライズなどの仕事を依頼できるクラウドソーシングサービス「Conyac」を提供している。依頼できるバイリンガルは、世界100カ国に6万人ほどいるという。ユーザーは、依頼したい仕事内容などを入力し、登録されているバイリンガルと交渉。契約して金額を支払うとバイリンガルユーザーが作業を開始する。
今後は、日本に来た訪日外国人の言語に関する課題を解決するサービス「バイリンガルコンシェルジュ」の提供を予定しているという。たとえば、日本に来た外国人が行きたい飲食店の予約を取ろうとしても、日本語しか通じないことは珍しくない。そこで、このサービスでは、自分の言語と対応してほしい言語や、「道案内」「予約」などのカテゴリを選択し、具体的な相談内容を記載。コンシェルジュからの提案を受けると、スマートフォンのビデオ通話などを使って、課題を解決してもらえる。
航空会社の全日本空輸(ANA)によれば、国際線の4割以上が海外の顧客となっており、収入も増加傾向にあるという。そこで、同社では訪日外国人の国内線運賃を全国一律で約1万円にする「Experience Japan Fare」を展開。また、全世界の顧客によるFacebookやTwitterの投票結果でエコノミークラスの機内食のメニューを決める「機内食総選挙」などを実施している。
さらに、2016年初頭から国内線(100のジェット機)で、飛行中のWi-Fiサービスを提供することを発表。オリンピックも見られるライブテレビや、スマートフォンと連携したエンターテイメントコンテンツを提供するほか、ECサイトを使って大型商品の機内販売なども実現していきたいとしている。また、英語以外の言語対応を急務としており、同時翻訳・通訳ツールを提供する事業者との提携なども視野に入れているとした。
ベルトラが運営する「VELTRA.com」は、温泉や乗馬、クルーズなど、世界中のアクティビティを予約できるマーケットプレイスだ。109カ国の約1万3500件のアクティビティを取り扱っており、2015年は1年で82万人が利用した。男女比は男性4、女性6。年代は20代21%、30代34%、40代22%、50代14%、60代以上が7%となる。NTTドコモやリクルート、ANAなどとも提携しているという。
英語版と中国版のサイトも運営している。英語サイトでは全国47都道府県の6000プランのアクティビティを掲載しており、利用者の国別シェアの上位は、米国(27%)、オーストラリア(8%)、シンガポール(8%)、フィリピン(6%)などとなっている。コンテンツは英語のネイティブスタッフが作成し、サポートも担当しているという。
旅行会社のJTBでは、コンサルティングやプロモーションなどの事業も展開しており、近年はインバウンド事業に力を入れているという。たとえば、NTTグループ各社と連携して日本の観光情報を伝えるアプリ「Japan Travel Guide」を提供。また、日本旅行専門サイト「JAPANiCAN.COM」を多言語(英語、タイ語、韓国語、中国語)で展開している。今後は、自治体や企業に同社のインバウンドソリューションを提供するとともに、同じくインバウンド事業に取り組む企業と提携していきたいという。
「Yelp」は、世界中の飲食店や施設の口コミを投稿・閲覧できるサービス。グルメ口コミサイトの「食べログ」などと違い、住所さえあれば忠犬ハチ公像や神社など、どんなスポットでも口コミを登録できることが特徴だ。これまでに投稿されたレビュー数は世界で9000万を超え、1億5000万のユーザーが毎月アクセスしているという。32カ国15言語で展開しており、投稿された口コミは自動翻訳される。
人力翻訳サービス「Gengo」では、37カ国64言語の高品質で低価格な翻訳を依頼できる。合格率約5%のトランスレーター向けテストに合格した人だけが翻訳しており、現在は1万8000人のトランスレーターが24時間対応。ウェブサイトやAPIを通じてオンデマンドで翻訳を依頼できる。2時間以内に9割以上の翻訳が開始され、平均1時間で完了するスピードの速さが売りだ。楽天や、Expedia、講談社などが利用しているという。
利用シーンとしては、たとえばパルコは中国人やタイ人向けのセールやキャンペーンで活用。翻訳スピードの速さを利用して、閉店後に翻訳依頼をして、完成した文言をプリントアウトした紙を翌朝には商品に貼るなどしているという。また、JTBビジネスイノベーターズとは観光事業者向けの翻訳サービス「Gengo×JTB」を提供。JTBがGengoをホテルや旅館などに紹介しているそうだ。
NTTドコモでは、スマートフォンを活用した4つの翻訳サービスを提供している。まず、「はなして翻訳」はまるで通訳がいるように自分の言葉を翻訳してくれるサービス。通話中にボタンを押して話すことで、お互いの言葉に続き翻訳された言葉が伝わる。「うつして翻訳」は、海外の飲食店のメニューなどにスマホをかざすだけで母国語に翻訳表示してくれるサービスだ。
続いて「てがき翻訳」は、タブレットなどに書いた言葉や文章をすぐに翻訳してくれるサービス。手書きで書いた地図にコメントを加えて道案内するといった使い方もできる。最後に「メール翻訳コンシェル」は、入力されたメッセージを、ボタン1つで英語、韓国語、中国語に翻訳してメールで送れるサービスだ。
すでに「Google 翻訳」など、他社の翻訳サービスも多数提供されているが、ドコモのサービスは、対日本語への高い翻訳精度によって差別化できるとしている。今後は、すでに訪日外国人向けのサービスを手がけている企業や、訪日外国人向けサービスを提供しているクライアントがいる企業などと、アプリ間連携をしたり、同社のAPIを提供したりしていきたいという。
BUZZPORTは、世界遺産の町での壁画巡りや、雪国での犬ぞり体験など、一般的な旅行会社では取り扱っていないユニークなツアーに参加できる旅行サイト「TRAVEL PLANET」を運営している。ユーザーは、歴史やスポーツ体験、ショッピングなど興味のあるカテゴリと行ってみたい国を選択してツアーに参加する。Facebookの友人がどの国に行ったのかも知ることができる。
一方で、インバウンドについては、日本の文化に興味のある外国人向けのメニューを用意する。たとえば、サムライが好きな人向けには「真田幸村ツアー」などを企画する。東京の江戸城跡や、長野の上田城跡、和歌山の真田庵など、全国の真田幸村に縁のある地を巡るというもので、アプリなどとも連携させていきたいとした。
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