スマートフォンネイティブが見ている世界

「Instagram」でリア充演出する大学生--その実態は - (page 2)

無理しても「リア充」を演出しなければならない大学生

 東京広告協会の「大学生のSNSを使った生活行動に関する調査」(2015年12月)によると、「現在Instagramを利用しているか」という質問に対して、56.6%と約6割が「利用している」と回答。Instagramは、「1年で利用が増えたSNS」のトップである43.8%を占め、最も大学生らしいと思うSNSについても、42.0%と他のSNSを抜いてトップとなった。

 Instagramの利用時の意識は、「自分が周囲にどのように見られているか気になる」(「そう思う」「ややそう思う」合計57.8%)、「どんな投稿をしているかで自分のイメージが左右されていると思う」(同54.8%)、「もっとおしゃれに、素敵に自分を演出する写真や画像を投稿したい」(同58.7%)など、周囲の目を気にして利用する割合が高かった。

 「携帯・スマホで撮影した写真の投稿頻度」は、「頻繁にしている」「たまにしている」の合計が66.4%。投稿内容は、「旅行先やイベントでの友達との写真」(65.6%)、「旅行先やイベントの風景写真」(64.9%)、「外食先の料理やスイーツ、お酒などの写真」(60.7%)、「日常生活での友達や家族との写真」(45.0%)などとなっている。大学生は、その日の記念として友達と撮影する割合が高く、イベントだけでなく日常の写真もマメに投稿する傾向にある。彼らはなぜ、さまざまな写真をSNSに投稿するのだろうか。

 その理由を推し量れるこのような質問もある。SNSにおいて「リア充」だと思う人については、「SNSに頻繁にイベントや遊びの写真を投稿している人」(「そう思う」「ややそう思う」合計66.8%)が最多となり、「SNSでの友達・フォロワーが多い人」(同35.5%)、「SNSに頻繁に近況やつぶやきをテキストで投稿している人」(同28.8%)を大幅に上回っていた。

 つまり、周囲にリア充と思われたいために、友達と写る写真やイベント写真などを頻繁に投稿していると考えられるのだ。無理してでもリア充と思われなければ居場所がない、ぼっちと思われたら仲間はずれにされる――そのような大学生の心情が見えるのではないだろうか。そして、周囲のみんなに対して一番端的に写真でリア充を演出できるSNS、それがInstagramというわけだ。Instagramが一番大学生らしいと思うSNSであるという事実は、とても皮肉に感じられる。

“キョロ充”ではなくリアル人間関係の充実を

 誰でも周囲にはちょっと見栄を張りたいし、良い顔をしたいという気持ちがあるものだ。特に社会の縮図となるFacebookでは、大人でも、ファストフードに行った日常は投稿しないが、ちょっといいレストランに行った非日常は積極的に投稿するなど、SNSで多少盛ることは一般的となっている。

 しかし、周囲からよく見られるためにやりたくもないことをやったり、親しくもないのに写真を撮ったりするのはどうなのだろうか。そのような虚構のために限られた時間を使うのはあまりにもったいない。SNS内でいくら「いいね!」を獲得しても、実際の生活や人間関係が充実することはないのだ。

 特に大学時代は、社会に出る前の段階として、本当に自分がやりたいことを見つけて力を入れるべき大切な時だ。周囲に親しいと思われるかどうかよりも、一生続く人間関係を築けるか否かが重要だ。周囲にそのような本末転倒な状況に陥っている若者がいたら、ぜひアドバイスしてあげてほしい。


高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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