筆者は「Chaperone」を呼び出すように言われた。
海底に沈んだ海賊船の甲板に立ち、欄干に向かって歩を進めた。周りではあちこちで魚が泳いでいる。光を発する格子が目の前に現れた。これは壁があることを表している。仮想世界ではなく、現実世界の壁だ。こういったことはすべて、過去に体験したことがある。部屋全体にわたるPC向け没入型仮想現実(VR)体験であり、2016年に発売予定の「HTC Vive」を、筆者は2015年前半に試した。しかし、2016年初頭にラスベガスで開催されたCESでは、新たな展開があった。
突然、壁の後ろに発光体が現れ、自分のいる部屋全体をまるでレントゲン写真のように見ることができた。家具やラスベガスの奇妙な模様の絨毯、筆者を撮影している米CNETのビデオクルーが視界に入った。
Oculusが発売間近のVRシステム「Oculus Rift」の準備を進め、ソニーがゲーム機「PlayStation 4」(PS4)向けの「PlayStation VR」を用意している今、HTC ViveはVR競争における第3勢力といった印象だ。Viveの発売は2015年末の予定だったが、2016年4月に延期された。ラスベガスで開催のCESで、その理由がわかった。ハードウェアが改良され、機能向上が施されている。何より重要なのは、部屋を感知する新しいカメラが、Viveの頭部装着型ディスプレイの外側に追加されたことだ。
Viveは群を抜いて最も野心的なVRプラットフォームである。部屋中にわたる体験を目指している。部屋全体を感知して、最大で対角5mのスペースをユーザーが自由に動き回れるVRキットだ。そのスペースはヨガマットを2枚並べた広さに相当するという。HTCのVirtual Reality GroupのバイスプレジデントであるDan O'Brien氏は、ラスベガスでの会見中にこう説明した。
ヘルメットをかぶって仮想世界を歩き回るというのは、危険な行為だ。CES会場の整然としたデモルームであっても危ない。HTCとValveは前回のハードウェアで、Viveが壁や家具を感知する手段を開発したが、十分な出来とは言えなかった。「HTC Vive Pre」と呼ばれる最新の開発者向けハードウェアは、カメラを使って部屋を見渡し、あらゆるものの位置について最新の情報を継続的に提供することができる。筆者は映画「ダークナイト」でバットソナービジョンを使うバットマンのような気分になった。
軽くなった改良型の新しいワイヤレスコントローラ(Viveの旧ハードウェアから改善され、1回の充電で4時間持続)のホームボタンをダブルクリックすると、Vive Preは周りの世界を見せてくれる。しかし、ナイトビジョンとX線を組み合わせたような奇妙なグラフィックスレイヤは、本物のカメラフィードと同じではない。ValveのChet Falisze氏によると、これは遅延を減らすためだという。カメラが捉えた画像のピクチャインピクチャビューが小さく表示されるが、拡大すると奇妙なソナーのように感じられる。
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