Vive Preの体験は、「Microsoft HoloLens」のように仮想世界が現実に入り込む拡張現実のようなものではない。少し違う。現実が仮想に入るような感覚だ。
Vive Preのパーツはすべて新しく、洗練されている。コントローラは、実際の店舗で売られているものに近くなった。Viveに同梱の部屋感知ベースステーション(小型スピーカーのように高い場所に設置するよう設計されたレーザー放射ボックス)は、以前より小さくなったコンパクトな立方体だ。ヘルメットは軽量化されており、ストラップデザインが改良され、鼻と顔への装着感を改善する交換可能なパーツ(HTCは「ガスケット」と呼ぶ)を備える。ビジュアルディスプレイも大幅に強化された。解像度は同じだが、「ムラ」(HTCとValveによると、VR画像を薄暗くし、色あせさせる処理レイヤだという)を除去するエンジニアリング面の修正により、筆者が体験した短時間のデモでは、赤色の鮮やかさ、各色の明るさや鮮やかさが大幅に増していた。
仮想の海で筆者のそばを泳いでいった魚は、非常に細かい部分まで再現されていた。目の前を悠然と泳ぐ青い鯨は、巨大な目でこちらを見つめ返した。前に見たときよりもリアルに思えた。見上げた先の海面から射し込む陽光は、非常に生き生きとしているように感じた。見事なゲーム「Job Simulator」(Oculus向けにも登場する予定)も、筆者が過去に試したことのなかったデモだ。コーヒーを注いで、滑稽なコンピュータのプラグを差し込み、明るい色の作業スペースで簡単な事務作業を試みた。これはViveのVRの画質がどれだけ鮮明になったかを示している。ピクセルが溶けてなくなる効果があるように感じた。
Vive Preはまだ最終版のハードウェアではない。HTCとValveによると、この開発者向けユニットに続いて別のバージョンが登場し、その後で完成品がリリースされるという。しかし、以前より大幅に前進している。とはいえ、部屋全体を使うフルモーションVRに対するHTCとValveのビジョンについて、筆者は今も疑問を感じている。Viveの2つのコントローラ、ルームセンサ、ケーブルで接続するヘルメット、さらにゲームグラフィックスを処理できるほどのPCが必要なことを考えると、どんな価格であっても、Viveの魅力は薄れてしまうだろう。
HTCとValveは明らかに、VRの限界を押し上げて、拡張現実の感覚に近づきつつある領域まで拡大することに取り組んでいるが、VR(と大半の人々)は、その大きな一歩を踏み出す準備ができていない可能性もある。とはいえ、これが素晴らしいものであることに変わりはない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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