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注目の自動運転、すぐそこにある未来と課題--CESから始まる自動車業界の2016年 - (page 2)

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無人で操作できる駐車機能を搭載、市販したBMWの「7シリーズ」

 CESからわずか半年、BMWは無人での駐車機能を最上級モデルの「7シリーズ」に搭載して市販した。運転席から降りたあとに、リモコンで駐車できる機能だ。ハンドルの切れ角は大きくなく、車庫の前のみで操作する初歩的なものではあるが、無人で操作できる機能が実車に積まれたのは大きな一歩だ。

BMWは、EVの「i3」に自動駐車機能を搭載してデモ走行をした。スマートウォッチに呼びかけると、無人で迎えに来てくれる
BMWは、EVの「i3」に自動駐車機能を搭載してデモ走行をした。スマートウォッチに呼びかけると、無人で迎えに来てくれる

 10月に開催された東京モーターショーにあわせて、トヨタ、日産が自動運転のデモ走行を行ったことは記憶にあたらしい。トヨタの自動運転車には直接触れるチャンスがなかったが、テレビやウェブで公開されている動画を見る限り、高速道路だけでのデモ走行のみだった。実は、一般道のほうが自動運転は難しい。歩行者が交差点を渡り、合流や右左折といったイベントが頻発するからだ。

 高速道路では、すでに市販車に搭載されているレーン・キーピング・アシストで白線内を走り、アダプティブ・クルーズ・コントロールで前のクルマに付いて行くことでかなりのシーンをカバーできる。すでにメルセデス・ベンツやスバルでは前のクルマに付いていく程度であれば、操舵機能まで加わっている。あとは、車線変更を自動でできれば、高速道路での自動運転はできる。トヨタの自動走行デモでは、車線変更時に斜め後ろのクルマが急加速して車線をブロックしていた。故意か不明だが、死角にクルマがいなければ、自動での車線変更はぐっと簡単になる。

日産「リーフ」をベースにした自動運転のデモカーで、お台場の臨海副都心の公道を走行した。自動運転の分野でNASALと提携するなど、精力的な開発を行っている
日産「リーフ」をベースにした自動運転のデモカーで、お台場の臨海副都心の公道を走行した。自動運転の分野でNASALと提携するなど、精力的な開発を行っている

 これに対して日産は、東京オリンピックを控えて開発目覚ましいお台場という難関でのデモ走行を行った。当日は雨模様で、センサ類にとってタフな状況だった。日産リーフをベースにミリ波レーダと12カ所のカメラ、「3Dフラッシュライダー」なる最新型のレーザスキャナを4カ所に取り付けている。これらのセンサ類を総動員して得た莫大な情報を瞬時に分析して、行動を判断するのだ。

 デジタルマップとSLAMによって認識した自車位を照らし合わせ、「いま、どこにいるか」を正確に認識することで自動運転の精度が上がる。センターコンソール上にあるレバーを操作すれば、車線変更も自動で可能だ。デモ走行中にひやっとしたのは、法定速度を大きく上回る速度の他車が上り坂に向かって加速しながら、分岐部分で接近してくるという悪条件が重なったシーンだった。今後、自動運転の技術が進む過程で、「法定速度を守る」ことは課題になりそうだ。日本では、法定速度を10~20km/h上回る違反は慣例的に行われており、1台だけ法定速度を守っているとかえって危ない。交通環境に合致した適正な速度規制を整えた上で、違反すれば5km/hオーバーでも捕まえるという欧米並みの対応が望まれる。

日産はディスプレイを工夫し、自動運転のクルマが周囲をどう認識しているかを見せている。運転者に恐怖を与えないように、ドライバーに情報を提供する工夫をしている
日産はディスプレイを工夫し、自動運転のクルマが周囲をどう認識しているかを見せている。運転者に恐怖を与えないように、ドライバーに情報を提供する工夫をしている

自動運転の実用に向けた課題

 ハッキリ言えば、技術的には自動運転は実現できる段階に達している。残された課題は、法律や保険、そして社会的受容性だ。ウィーン条約やジュネーブ条約といった国際条約では運転者の存在を規定しているので、それがひとつの壁だ。国連ではWP1なる検討会が組織されて、自動運転に関する国際調和を進めるWP29と共に検討が進みつつある。さらに、「誰が運転者として責任を取るか」という保険の問題もある。公道での自動運転を合法化したミシガン州では、自動運転の専用ナンバーを発行し、500万ドル以上の保険に加入することを義務付けた。加えて、公道走行時には運転操作ができる人間が乗車する必要がある。

 歯に衣着せぬ言い方をすれば、「旧来の自動車産業として満たすべき要件」が自動運転実現のための壁とも言える。だからこそ、Googleやアップル、日本のZMPのようなベンチャーが新しいプレイヤーとして期待されている。無人運転やロボット・カーのような自由な発想から「自動運転のビジネスモデル」を考えてくるからだ。

 自動運転は、ITとも相性がいい。IT産業側から見れば、最後のインターネット不在地である自動車産業に対する期待が高い。クルマがWi-Fiルータのようになって車内でデバイスをつなげたり、クラウドの向こうに大きなデータと計算能力を持たせたり、スマホで使える便利な機能を車載で使ったり、カーナビの地図データなどを差分更新したり……といったことは、日に日に当たり前になりつつある。

 現在、米国でメルセデス・ベンツに乗ってスマホを連動させると、スマホの住所録から目的地を入力して、ウェブラジオを聞くことができる。さらに、「由美は、●●さんの家に向かって、××を聞きながら走っています」という定型文が表示され、さらにそれをFacebookやTwitterといったSNSにポスティングするか?という質問まで表示される。若い世代にとって、SNSは空気のような存在であり、それなしで運転するなどありえないのだ。

 自動車産業と比べると、IT分野の進化のスピードは早い。IT化が急速に進んできたのはこの2~3年のことだが、スマホの普及に伴ってITに馴染む人が増えたことで、車載ITの分野は急速に進展してきた。2016年はさらにこの動きが加速し、高級車だけではなく、ほとんどの市販車に車載ITが搭載される時代になるだろう。自動運転については、2017~2018年にはドライバーがいる状態でのセミ自動運転が市販車に搭載される時代がやってくるに違いない。

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