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動画配信市場は“まだ導入期”--「dTV」事業責任者に聞く

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 2015年後半、動画配信サービスをめぐる動きが積極的に見られている。9月には、グローバルで約6000万人以上のユーザーを抱える米国の定額動画配信大手「Netflix」が日本に上陸し、オリジナルコンテンツの配信を開始。また、Appleはテレビ用セットトップボックス(STB)である「Apple TV」の最新モデルをリリースしたほか、AmazonもSTB「Fire TV Stick」を発売した。Googleも定額動画配信サービス「YouTube RED」を米国内で発表しており、日本導入が待たれるところだ。

 こうした海外勢の動きにあわせるように、国内サービスにも動きがみられる。10月には民放キー局5社による“見逃し配信”のポータルサイト「TVer」が開始。さらに11月には、定額動画配信の国内大手「dTV」が4K解像度の動画配信を開始したほか、映画「スターウォーズ」の旧作6作品を期間限定で配信するなど、積極的にコンテンツを強化している。グローバルサービスの日本参入やサービス強化を受けて、国内サービスは今後どのような戦略で市場拡大を狙っているのだろうか。dTVを運営するエイベックス通信放送の取締役である村本理恵子氏に聞いた。

エイベックス通信放送の取締役である村本理恵子氏
エイベックス通信放送の取締役である村本理恵子氏

STBの普及拡大によって、テレビに人が戻ってきた

--まずはdTVの現状について教えてください。

村本氏:dTVの会員数は現在約480万人おり、500万人が視野に見えてきました。人気コンテンツの傾向は年代や嗜好性によって異なってくるのですが、たとえば劇場版「進撃の巨人」と連動したdTVオリジナルの進撃の巨人のような、多くのファンがいる作品とコラボレーションしたオリジナルコンテンツの展開は、非常に強力なシナジーを生み出していると感じています。映画、海外ドラマについてもそうですが、それぞれのジャンルに応じてユーザーの興味関心に刺さるような先行配信、独占配信といったコンテンツを企画し、提供しているのがポイントですね。音楽ファンにはアーティストのライブの生配信なども人気です。

--ジャンルごとに人気の傾向はかなり異なってくるということですね。

村本氏:私たちは、コンテンツが人をサービスに呼んでくるものだと思っています。そのため、dTV全体でマーケティングをするだけでなく、ターゲットを細かく分けることで、それぞれの層の視聴者のニーズに応えるマーケティングをしています。加えて、エイベックスはイベント運営のノウハウにも長けているので、配信するコンテンツをテーマにしたユーザー向けのイベントなども開催しています。ターゲットごとに、何を提供すればいいのか、どう伝えればいいのかを細かく考えながら、ネットとリアルのさまざまなチャネルを組み合わせてコンテンツを届けています。

--視聴デバイスの利用動向はいかがでしょうか。

村本氏:全会員の4割くらいはマルチデバイスでサービスを利用しています。当初はPCでの利用が多かったのですが、テレビ用STB「dTVターミナル」をリリースしてから、テレビでの視聴が大きく増加しています。昨今“テレビ離れ”と言われていますが、最近はテレビをネットにつなげることに抵抗感がなくなり、むしろテレビに人が戻りつつあることを実感しています。

 かつて映画やドラマのレンタルDVDはテレビで視聴することが当たり前でしたが、その当たり前のことをdTVでもできるようにするのは、当然の流れでした。単純に、DVDを借りてこなくても、好きな映画やドラマを選んで見られれば楽ですよね。ネットに接続できない仕様のテレビでも、dTVターミナルをつなげれば、テレビを操作する感覚で利用できるという操作性にこだわった点、ユーザーに余計な操作をさせず、いかに日常生活の中に溶け込めるかを考えた点が大きなポイントです。またウェブサイトのUIも同じように、テレビのような自然な操作性にこだわって刷新をしています。

「dTV」
「dTV」

--ここまでの成長要因を教えてください。特に、国内外の多くのサービスが参入する中でどのように他社に対する差別化を図ってきたのでしょう。

村本氏:むしろ、動画配信サービスに対して世の中の関心が高まる中で、dTVの価値やコストパフォーマンスの高さに気づいてくださるユーザーが増えたのではないかと感じています。その中で私たちが意識しているのは、dTVがただ映画やドラマを配信するだけのサービスではないということです。エンターテインメントのひとつとして、ユーザーの“何か楽しみたい”というニーズのそばにある存在でありたいという思いが強いのです。

 一般的な動画配信は、映画、ドラマ、アニメなどをどう品揃えしてユーザーに見せていくのかを一番に考えますが、私たちは「BeeTV」時代から蓄積してきたオリジナルコンテンツもあり、ショートフィルムもあり、音楽ライブやミュージックビデオもあり、カラオケもあり、お笑いや落語もあり、ユーザーそれぞれの楽しみ方に応えられる多様性を持ったサービスであるという点が、他社に対する一番の差別化ではないかと思います。ワンストップでエンターテインメントのさまざまなニーズに応えられる立ち位置が、他の動画配信サービスと異なるのです。

 加えて、エイベックスはエンターテインメント企業である点も大きいと思います。ニーズに合わせて、ただコンテンツを調達して配信すればいいという発想ではサービスを運営していません。コンテンツのラインアップを意識するのではなく、ユーザーにどう楽しんでもらうかを意識して知恵を絞っています。ユーザーはいつも「映画を見たい」「ドラマを見たい」と思っているわけではありません。お笑いが見たいときもアニメが見たいときも、暇をつぶしたいときもある。さまざまなエンターテインメントのニーズにワンストップで応えて、生活に潤いを与えるという存在が、dTVの目指しているところです。このあたりは、前身となるBeeTV(2009年開始)からのノウハウの蓄積もあると思います。どのようなニーズにどのようなコンテンツを提供するのが適切かを理解しているのです。

 機能面では、ほぼすべてのコンテンツでダウンロード視聴ができる点が評価されていると思います。この機能はBeeTVの時代から実装していたのですが、移動中に動画視聴を楽しもうと思ったときに、当時はモバイルの通信速度も遅かったため、ストリーミングだけのサービスでは役に立たないと思ったのです。今でも、パケット通信量をセーブするために自宅のWi-Fiでダウンロードして移動中に楽しむという使い方を、多くのユーザーがしています。モバイル向けの動画配信サービスでダウンロード視聴に対応することは必須だと考えています。

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