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動画配信市場は“まだ導入期”--「dTV」事業責任者に聞く - (page 2)

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今後の成長のために必要な“脱ドコモ色”

--今後のサービスの成長のために、どのような課題があると考えていますか。

村本氏:ひとつは、dTVがドコモユーザーだけを対象としたサービスだと思われているところです。「ドコモユーザーしか使えないのか」というお問合せは今でもいただいています。サービスはすでに3キャリアに対応しているのですが、ユーザーの多くはドコモユーザーというのが現状で、まだまだ(ユーザー数を増加させる)伸びしろがあるのではないかと思っています。ドコモユーザーにきっちりとサービスを届けながらも、ドコモ以外のユーザーにどのように価値を訴求して、“ドコモユーザー専用のサービス”というイメージを払拭できるかが課題です。ただ、dTVはドコモの店頭でも入会促進をして加入していただき、「解約しない」という選択をした方も500万人近くいらっしゃる。その事実は大きな自信ですね。

 また、機能面で実現できているのは理想の6割程度という状況なので、さらに改善していくことが重要だと考えています。UIについても、現状が完成形だとは思っていないので、いかに余計な手間を省いてテレビ感覚で楽しめるかというポイントでの改善を続けていきます。コンテンツ戦略も、「スターウォーズ」の旧作独占配信に続く、多くのユーザーの期待に応えられるような大型タイトルの独占配信を予定しているほか、人気アーティストのライブ生中継、リアルイベントの開催などにも引き続き力を入れていきます。最近ではユーザーの利用動向に応じたレコメント機能を搭載しましたが、これに運営スタッフによる独自の編成も加えて、ユーザーにとって意外性のある“変化球”を提案して回遊性を生み出していきたいと思います。

多くのユーザーの期待に応えられる大型タイトルを独占配信していくと村本氏多くのユーザーの期待に応えられる大型タイトルを独占配信していくと村本氏

--もはや動画配信はレンタルDVDを超えるプラットフォームになっていくのかもしれませんね。

村本氏:動画配信サービスとレンタルDVDは、今後、相互補完の関係になっていくのではないかと思います。グループ会社のエイベックス・デジタルは、9月にレンタルDVDのゲオと協業して「ゲオチャンネル」というVODサービスを2016年に開始することを発表しました。レンタル店舗に並んでいない作品をネット配信で見たり、ネット配信で見ていた作品をレンタルで借りたり、ネット配信していない作品を宅配レンタルで借りたりするような、相互関係が生み出せるのではないでしょうか。配信だけですべてが上手くいくとは思っておらず、レンタルDVD市場にはまた違った顧客ニーズがある。Netflixが米国でユーザー数を大きく伸ばした要因のひとつは、宅配レンタルのユーザーを持っていたと言われていますが、そうした海外の動向から学んでユーザー数を伸ばしていきたいですね。

動画配信サービスは、まだ業界だけで盛り上がっている

--2015年の後半はNetflix、Amazon、Appleが次々に動画配信関連のサービスや製品をリリースし、市場は盛り上がっているように感じますが、一方で動画配信は依然としてキャズムを超えていないという意見もあります。市場の現状と課題についてどのように感じているでしょうか。

村本氏:確かに、動画配信サービスはまだキャズムを超えていません。個人的な感覚では、まだ業界内での盛り上がりの域を出ていないのではないでしょうか。これまで業界内でもあまり盛り上がっていなかったところに、さまざまな海外のプレイヤーが参入してきて、やっと業界内やネットサービスに敏感なユーザー層に「これから動画配信がくる」という雰囲気が生まれてきました。市場はやっと“導入期”の段階であり、まだまだこれからだと感じています。

 キャズムを超えるためには、動画配信サービスがいかに自然にライフスタイルの中に溶け込んで、その便利さを実感してもらえるかがとても重要なのではないかと思います。むしろ、その良さが伝わらなければ、市場はいつまでも大きくなりません。業界の盛り上がりは大歓迎ですが、一時期のブームで終わってはいけないと考えています。その中で、多くの方にその利便性や楽しさに気付いてもらえるように、私たちは努力していきたいと考えています。一方で、もちろんどのサービスが生き残るのかという議論はナンセンスだとも思います。ユーザーのニーズに合わせてさまざまな特徴を持った動画配信サービスが選ばれる時代がくればいいですね。

作品とユーザーの出会いを生み出し、それを制作者に還元する

--最後に、エイベックスグループは一部コンテンツの著作権管理についてJASRACからイーライセンスに移管すると発表しました。その点も踏まえて、動画配信サービスにおける著作権に対する考えを教えてください。

村本氏:私たちは、BeeTVを開始したときにオリジナル作品について“印税分配”という仕組みを導入していて、過去に制作された作品であっても、1回でも視聴されている限りは出演者や制作会社に印税が入ってくる仕組みを作り出しました。その意図というのは、映像作品を作ったクリエイターが、その作品で得られた印税をもとに、また良い作品を作れるエコシステムを生み出さなければならないということです。この仕組みを考えていくことは、コンテンツメーカーとして当然の使命なのではないかと思います。

 調達したコンテンツについては、それぞれのコンテンツメーカーの取り決めに基づくのですが、私たちが考えた印税分配の仕組みは、業界に対するひとつのメッセージだと思っています。出演者やスタッフの人たちが、いかにして作品を作り上げたリターンを得るかという仕組みがなければ、次につながらない。ネット時代は作品を生み出すクリエイターと視聴者の距離が非常に近い関係になるからこそ、ネット時代のクリエイターと視聴者の関係を踏まえた新しいエコシステムを考えていく必要があるのです。

 加えて、ネット動画配信と印税分配の仕組みは、もう人の目に触れる機会の減ってしまった過去の名作にも光を当てることになるのではないかと思います。レンタルDVD店などでは棚から消えてしまったり、倉庫に眠ってしまったりしたような作品も、ネット動画配信プラットフォームを通じて視聴者に届けることによって、印税を生み出し制作者のモチベーションになる。印税分配の仕組みは、お蔵入りしてしまった旧作が見直されるモデルだともいえ、それがdTVのようなサブスクリプション型モデルのミッションでもあると考えています。dTVには「誰も見ていない」コンテンツはありません。究極のロングテールモデルを生み出しているのです。

dTVターミナルをつないだテレビではさまざまな作品をザッピングできる
dTVターミナルをつないだテレビではさまざまな作品をザッピングできる

--確かに、積極的に借りようとは思わない作品でも、定額制サービスであれば少し見てみようという気持ちになるかもしれませんね。

村本氏:サブスクリプション型サービスの良さは、ザッピングしながら作品の再発見や今までにない気づきを得られることではないかと思います。動画配信サービスは「ビデオ・オン・デマンド(VOD)」と言われていますが、ユーザーの中には明確なデマンドがない場合も多い。それなのに、「検索して見たい作品を探せ」というのは、ちょっと乱暴ではないかと思うのです。そのような状況の中で、いかに気軽な気持ちでコンテンツに触れられる環境を作るか、そこから見てみたいというインスピレーションを生み出して楽しんでいただけるかが、サービス運営者にとって非常に重要なことなのではないかと思います。

 動画配信サービスは最近、オリジナル作品が強みのひとつと言われていますが、実はオリジナル作品が差別化になるとは限りません。膨大な作品数をラインアップしていても、ただ整然とタイトルが並んでいるだけではユーザーのモチベーションは生まれません。サービスにアクセスしたときに、さまざまな作品との新たな出会いがあったり、気づきを得られたりするといったユーザー体験そのものが、本当の差別化になるのではないかと考えています。

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