そんな「隠れ爆買い」をしている訪日タイ人の悩みが、「日本でのインターネット接続」だと村上氏は指摘する。日本はこれまで独自規格で携帯電話が発達したことを背景に、世界でも稀な非差し込み式SIMカードの歴史が長かった。また、ほぼすべての携帯電話がネットに接続しているためWi-Fiをあまり必要としてこなかったなど、他国とは状況が異なる。
これはタイ人に限ったことではないが、そうした要因によって、訪日外国人が日本に到着後、いつものように携帯電話にSIMカードを差し込んでインターネットに接続することが煩雑となってしまっている。タイでは不要なAPN設定などが求められ、タイ人旅行者は少なからず「意外と不便だ」と不満をもらしているそうだ。
Japan emotionでは、この不満にアフターサービスで応えている。設定の仕方が分からなければ、空港のWi-Fiに接続するなどして専用のLINEアカウントに問い合わせれば、手順を説明するよう体制を整えている。特に日本に無事に到着したことをタイにいる家族に伝えたい旅行者から好評とのこと。
このアフターサービスがクチコミで評判を呼び、価格以外のところで優位性を保つことにもつながっているそうだ。村上氏は、「訪日タイ人観光客向けのレンタルWi-Fi・SIM市場は、すでに価格崩壊の時期に入ってきている。アフターサービスには引き続き注力しつつ、顧客の声やネットの接続状況に関するデータを解析し、サービスの品質向上を図りたい」と話す。
村上氏に、ほかにも訪日タイ人旅行客にとって不便な点を聞いた。「ある特定のフリーWi-Fiスポットから別のスポットに移動したら新たに設定が必要になることが多いことにも不満が多い。公共交通機関を含め、Wi-Fi圏内に入るだけで自動で接続され、個人情報を守るセキュリティはしっかりと担保される、日本ならではのシステムがあると解消されるのではないか」。
もし、こうしたことが実現されれば、MICEと呼ばれる商用目的の訪日客の満足度も高められるだろう。村上氏いわく、「彼らは出張でも結構な買い物をしてお金を落としていく」そうだ。
実際、筆者の知人の夫であるタイ人男性は、日本語は分からないが日本へ出張する機会は多く、その際には必ず「ビンテージギター」「古木のみを用いた段々式薬箱」「古伊万里の花瓶」など、日本人である私でも分からないような代物をインターネットで探しては注文して持ち返ってくる。こういった、静かで行儀がよく、筋のよいお客さんとしての訪日タイ人を、インターネット環境を整備することで、よりもてなしたいものである。
(編集協力:岡徳之)
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