BlackBerryが2015年末にパキスタンの市場から撤退することになった。ユーザープライバシーの大規模侵害につながる要求をパキスタンの電気通信庁から受けたことが理由だという。同社が米国時間11月30日に発表した。
BlackBerryは、同国内で送受信される暗号化された電子メールや「BlackBerry Messenger」(BBM)メッセージを含む「BlackBerry Enterprise Server」(BES)の監視を可能にするパキスタン政府の命令に従うことを拒んだ。そのため、BlackBerryは12月30日をもって撤退する、と最高執行責任者(COO)のMarty Beard氏は11月30日にブログ投稿で述べた。BlackBerryによると、同社は世界のいかなる場所であろうと、顧客情報へのいわゆる「バックドア」アクセスを許可することを全面的に禁じているという。
「パキスタンの要求は、市民の安全に関わる問題ではない。犯罪活動の捜査であれば、当社は喜んで法執行機関に力を貸す方針だ。今回のケースはそれには当てはまらない。基本的にパキスタンが要求しているのは、当社のBES顧客の全情報への自由なアクセスである」(Beard氏)
何十年も前から電話線を盗聴したり、郵便物を開封したりすることに慣れている政府は、犯罪やセキュリティ脅威を防止するために人々のデジタルデータにアクセスすることを望んでいる。しかし、とりわけ米国家安全保障局(NSA)の元契約社員であるEdward Snowden氏が米国と英国による大規模な監視活動を暴露したことを受けて、テクノロジ企業各社は、政府からのデータ開示要求が過剰だと感じた場合、それに抵抗するようになっている。
BlackBerryは昔から政府や軍、ビジネス顧客へのセールストークの中で、セキュリティを強調してきた。パキスタン政府がBESへの「全面的」なアクセスを要求していることを知って、同社は、顧客の通信があまりにも大きな危険にさらされるので、パキスタンから完全撤退する以外の道はないと判断した。
BlackBerryは、命令に従うか撤退するかの選択を迫られた場合の対応方法に関して前例を作ったが、同社以外にも、深刻な懸案に直面している企業はたくさんある。暗号化通信をめぐる議論は多くの国で大きくなっている。それには、無視するのが難しい米国や英国などの巨大市場も含まれる。政府が国家安全保障の名の下に暗号化に厳しい制限を加えるようになったら、GoogleやApple、Facebookといったテクノロジ業界の巨大企業は、パキスタンよりもはるかに身近な国々で顧客のプライバシーの重要性について判断を下す必要に迫られるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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