スマートフォンネイティブが見ている世界

「Instagramの女王」が引退した理由は?--“盛れる自撮り”にハマる女子高生たち

 以前もセルフィーについてご紹介したが、ティーンはとにかく自撮りに慣れている。自分が可愛く撮れる角度を熟知しているため、どの自撮りも可愛く撮れているのだ。加工アプリにも詳しく、スマホに複数の加工アプリを入れていることが多い。プリクラのように目を大きくしたりするアプリのほか、キラキラなどで写真をデコレーションするのも日常茶飯事だ。

 20~30代女性を対象としたクリニークの「写真加工ツールに関する調査」(2015年2月)によると、「写真加工ツール(顔をキレイに見せてくれるもの)を使ったことがあるか」という質問に対し、「頻繁に使っている」が14.2%、「時々使っている」が31.0%、「1回または数回使ったことがある」が19.0%と、全体の約65%が利用したことがあると回答。自分のSNSなどのプロフィール写真に、加工した写真を使っている割合は60.8%だった。

 「どんな写真を褒められると嬉しいか」という質問に対しては、「撮影したそのままの写真」が65.8%で最多となるものの、「写真写りを良くするために努力していることは」という質問に対しては、28.1%が「写真写りの良い角度を研究」、18.7%が「より良い加工アプリやツールなどを探す」と答えている。つまり、盛れるセルフィーと画像加工で理想の自分に近づけているのだ。

 このような行動に問題はないのか。盛れる自撮りや画像加工にはまる心理と危険性について見ていこう。

「ソーシャルメディアは本物の人生じゃない」

 オーストラリア出身のInstagram界のスター、18歳のエセナ・オニールさんが突然SNSからの引退を宣言して話題となったのをご存じだろうか。彼女は、主にセルフィーや私服のショットを多数公開。Instagramで57万人、YouTubeとTumblrで20万人、Snapchatで6万人のフォロワーを抱えるSNS界のセレブ的存在だった。


SNSからの引退について語るエセナ・オニールさん

 ところが突然、10月末に2000枚の写真を削除し、アカウント名を「Social Media is Not Real Life = ソーシャルメディアは本物の人生じゃない」と変更した上、すべてのSNSアカウントを削除。華麗に見えた自分のSNSライフの実情を告白したのだ。彼女は、「12歳から16歳までずっとSNSの中の完璧な少女達を見て過ごし、自分も丸1日かけて完璧な写真を撮ったものの、少しも満足せず幸せでもなかった」と胸の内を明かした。

 海辺でビキニ姿で横たわる写真を撮るためには、お腹をほっそり見せるために1日ほとんど何も食べずに食事制限をし、100回以上撮り直した。きれいなアクセサリーを着けた写真を撮るためには、化粧をし髪にウェーブをつける飾りや重いアクセサリーを着けてから、50回も撮り直した。彼女が身に付けた衣服には、メーカーから依頼を受けてお金をもらって撮ったものも多く、中には2000ドル払う企業もいたという。「写真の私は笑顔だったけれど、笑顔に意味はなかった」(オニールさん)。


 「朝起きたらまずInstagram、Tumblr、YouTubeのコメントをチェックし、自分がSNSに消費されていた」というオニールさん。彼女は「明快で価値に基づいたシステム」であるVimeoに引っ越しして日々の動画をアップロードしている。同時に「letsbegamechangers.com」という新しいサイトを立ち上げ、どのようにして企業から広告費をもらっていたか、またいくら稼いでいたかなどについて語っている。今後、Instagramの裏側、環境問題、ヴィーガニズム(動物製品を使わない生活様式)についても書いていくという。

 オニールさんはリアルの人生を楽しむのではなく、SNSに他人から承認される写真を投稿するために人生の貴重な時間を費やしていた。写真の中の笑顔は本物ではなく、承認欲求のためのものであり、心は笑っていなかったのだ。このことが世界的に話題になったのは、誰もがうすうす感づいていたSNSにおける病理が感じられるためだろう。そしてもちろん、この問題はオニールさんだけが抱えているのではない。

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