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病院でなく医師で選ぶ--インドでシェア9割のデジタル医療プラットフォーム「Practo」

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 普段からかかりつけの病院があるならまだしも、そうでない場合には友人に聞いたり、ウェブで検索したりして、よさそうな病院を探す人が多いだろう。しかし、ウェブだけでは十分な情報を得られないこともある。

 これは日本だけでなく、インドでも似たような状況だ。インドに赴任してきたばかりで土地勘のない日本人などは特に困っているようだ。さらに、インドでは病院ごとの医療やサービスのレベルの差が、日本とは比較にならないほど大きい。

 自身も父親の手術をきっかけにこうしたインドの課題に直面し、それを解決すべく医療サービス「Practo」を立ち上げたのがShashank ND氏。現在はシンガポールやインドネシアなど海外にも展開している。


PractoのCEO Shashank ND氏(出典:YourStory)

医師向け・患者向け、2つのサービスで市場を寡占

 2008年、当時NIT(National Institute of Technology)校に在籍していたShashank氏は、父親の膝の手術を目前に控えていた。彼は医師の判断に疑問を感じ、米国人医師によるセカンドオピニオンを父親に受けさせたいと考えた。

 しかし、そのためには父親の詳しい過去の医療記録が必要だった。当時インドの病院の記録は主に紙で保存されていたため、それらすべての写真を撮影し米国に送らなければならず、非常に手間がかかった。さらに、インドでは医師に関する情報が乏しく、少ない情報を材料に父親の執刀医を選ばなければならなかった。このことに問題意識を感じたShashank氏は、クラスメイトのAbhinav Lal氏と2人で在学中にPractoを創業した。

 Practoは2008年に医師向けのSaaSアプリ「Practo Ray」を開発し、BtoBサービス企業として事業を開始した。その後、2012年に400万米ドルの資金調達に成功し、2013年にBtoCの医師検索サービス「Practo Search」を開始。2015年2月にはセコイア・キャピタルから3000万米ドル、同年8月には中国のTencentから9000万米ドルを調達。調達金額は合計して1億2400万米ドルにのぼる。

 Practo Rayは、医師に対して患者の診療予約状況や診療記録の管理、処方箋や請求書の発行を支援したり、患者からの問い合わせに対応する自動音声応答機能など複数の機能を備えている。医師は月額999~1999ルピー(約1850~3700円)で利用できる。インド国内の医師向けSaaSアプリ市場において、なんと90%以上のシェアを占めている。

 一方のPracto Searchでは、患者が医師の学歴や医療の実績、ほかの患者からのレビューを見て、効率的に医師を探すことができる。指名した医師による診療を予約することも可能だ。Practoは、検索結果に病院やクリニックの広告を掲載する広告料で収益を上げているため、患者は無料で利用できる。Practo Searchは現在、ウェブ版、アンドロイドOS版、iOS版が提供されている。

 Practo Rayを利用する医師や病院が増えると、Practo Searchで患者が検索可能な医師が増える。また、Practo Searchを利用する患者が増えると、医師や病院にとってPracto Rayを利用するメリットが大きくなる。このように、2つのサービスがシナジー効果を生むことでユーザーが増加しているのだ。

 両サービスは、インドのほかにも、シンガポール、フィリピン、インドネシアの4カ国の合計35都市で展開されている。Practo Searchには合計20万人以上の医師と1万以上の診療所や病院が登録されており、毎月数百万人の患者が医師を検索したり、予約したりしている。今後は東南アジア、南米、中東、西欧州の10カ国、100都市への拡大を目指す。

 同社は2015年中に6社の買収を計画しており、11月3日時点で4社の買収を完了している。4月に予防医療サービス「Fitho」、7月にエンタープライズ向けのサービス開発企業「Genii Technologies」、そして9月にはクラウドベースの病院内情報管理サービス「InstaHealth」と、医師予約サービス「Qikwell Technologies」の2社を立て続けに買収した。Practoは、インドのデジタル医療のプラットフォームへと変貌しつつある。

確実に医師の診療を受けられるだけでもありがたい

 Practoがインドで受け入れられている背景には、冒頭でも述べたように医療サービスの質の偏りがある。医療以外でもそうだが、インドでは日本のようにどこの病院やお店に行っても一定の水準を超えるサービスを受けられるというわけではない。筆者も一度インドで入院したことがある。幸い、そのとき利用した病院のサービスの質は高かったが、同じ地域の別の病院は見るからに不潔で利用をためらうほどであった。

 さらに、インドでは診療を受けるために、患者の長蛇の列に並んで待たなければならなかったり、医師が予約管理を適切にできておらず、予約して病院へ行っても診療を拒否されることが少なくない。Practoを使えば確実に医師の診療を受けられるということだけでも、インドにおいてはありがたいのだ。

 Practoの競合にあたる地場サービスには、2015年9月にカナダの「Ask The Doctor」に買収された「SEHAT」や、2014年9月に240万米ドルの資金調達に成功した「Ziffi」などがある。しかし、Practoはこれまでの4社の買収によるサービスの多角化と、先述のシナジー効果により十分に差別化を図っている。

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