6月23日、大阪市西区のオリックス劇場で開かれたシャープの定時株主総会は、議長を務めた代表取締役社長の高橋興三氏に対して、社長退陣を求める怒号が飛び交うなど、波乱の株主総会となった。会場には、昨年の943人から250人以上増加し、1212人の株主が参加。質問者数は延べ23人。過去最長時間となる3時間23分におよんだ。
株主の多くの関心は、経営不振の責任をどう取るのか、そして、今後、シャープの再建をどう描くのかということに集中した。そうたし中、この株主総会の第1号議案において、定款一部変更が可決された。
改めてこの定款一部変更を確認してみると、事業内容の明確化を図るとともに、今後の事業展開に備えることを理由として、以下の7つの事業が新たに定款に加わった。
この中に、これまでのシャープの本業とはちょっと異なるものがある。それが「農産物の生産及び販売」である。最も本業と離れているはずのこの事業が、早くも実際の商品として11月18日から出荷を開始するというから驚きだ。
シャープは、11月18日から「ヘルシオお茶プレッソで飲む抹茶」を発売する。
これは、お茶メーカー「ヘルシオお茶プレッソ」でお茶を楽しむために用意した茶葉で、日光を遮りながら丁寧に栽培した「京都府 宇治産地の一番茶」を使用した高級品だ。「国内有数の茶産地である宇治の大地で丁寧に栽培した最高品質とされる一番茶を採用し、優しい渋みと旨みが特徴だ」とする。
シャープによると、「過去に販促品や斡旋品では食品を用意したことがあったが、正式に食品を販売するのは今回が初めてのこと」だという。
100年以上前の創業時にはベルトのバックルを開発。さらに、シャープペンシルを生み出した同社だが、100年以上の歴史の中で食品の販売実績はなく、記念すべき新分野進出の製品といえる。
製品には「XZ-TNB01A」という型番がついており、食品とはいえ、このあたりはなんとも電機メーカーらしい。
商品化したのは、正確には「碾茶(てんちゃ)」と呼ばれるもので、粉末状の抹茶にする前の茶葉を指す。新茶の萌芽時期に茶木を稲藁などで覆い、日光や遅霜を避けて育てた良質の新芽を蒸して乾燥させるため、煎茶や玉露のように茶葉を揉む工程がなく、碾茶炉と呼ばれる炉を使用して乾燥させる。それにより「焙炉香(ほいろか)」と呼ばれる“青海苔”のような独特の香味が特徴だという。
この特別な生産、製造方法による作られた碾茶を臼で細かく挽いた粉末が抹茶となる。
シャープでは、「碾茶が手に入りにくいという声があり、今回の製品化に至った。飲みたいときに飲みたい分だけ挽くことができ、鮮度の高い抹茶を味わうことができる」としている。
市販されている抹茶は開封後、時間が経過すると空気による酸化などで風味や香りの劣化が進むが、今回の「ヘルシオお茶プレッソで飲む抹茶」は、臼挽き前の碾茶の状態なので、抹茶を点てる直前に粉末状に挽いて、挽きたての風味や香りを楽しめるという。
2杯の抹茶を作る場合、お茶プレッソに付属したお茶スプーンの「大」の方で、一度に挽ける最大量となる3杯分の茶葉をお茶臼に入れ、挽きかた調節ダイヤルを「細」に合わせるとともに、挽くキーで「まとめ挽」を選び、スタートキーを押す。さらに追加で2杯を入れて茶葉を挽く。続いて、水タンクに水を入れて、フタをして本体にセット。お茶容器のフタカバーを開けて、完成した粉抹茶をお茶スプーンの「小」で山盛り5杯入れて、フタカバーを閉める。「温茶」を選び、スタートを押すと、抹茶を点ててくれる。これでお椀に注いで完成だ。
シャープによると、「茶葉の持つフレッシュな青々しい香りとツヤのある緑色。柔らかく濃厚な香味で、優しい渋みや旨みの融合した味わいが余韻に残る。空気による酸化などを抑えた抹茶本来の鮮やかな緑色と贅沢な風味や香りが得られる」としている。電機メーカーのサイトでは、なかなか見られないような表現が使われている。
60グラム入りで税別価格は6000円。なかなか高価なお茶であるが、それだけの価値はありそうだ。量販店や地域電気店での販売のほか、同社ショッピングサイトの「いい暮らしストア」を通じた販売を予定している。
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