ジュピターテレコム(J:COM)は10月13日、MVNO事業「J:COM MOBILE」を10月29日に開始することを発表した。auのLTE回線と折り畳みタイプのスマートフォンをセットにして提供し、独自の映像配信サービス利用時はパケット通信量をカウントしないなど、J:COMの特色を生かしたサービスとなっている。
同日の記者説明会で、J:COMの代表取締役会長である佐々木新一氏が、MVNO事業参入の経緯を説明した。2014年にジャパンケーブルネットと合併したことで加入世帯数が500万を超え、CATVのシェアでは5割を超える業界最大手となったJ:COMは、現在「J:COM Everywhere」というコンセプトを掲げてサービスやサポートの充実を進めている。そこで新たに、宅内だけでなく宅外でも映像コンテンツが利用できるサービスを提供することで、“どこでも”の価値を高めるべく、MVNOの参入に至ったとしている。
続いて代表取締役社長の牧俊夫氏が、J:COM MOBILEの詳細を語った。牧氏によると、今回のサービスを提供するにあたり、2つの要素を強く意識したとのこと。1つは、「Netfrix」などの動画配信サービスの増加で、今後モバイルでの動画視聴がより一層進むと考えられること。それゆえJ:COM MOBILEでは、J:COMの中心顧客である50~70代のユーザーにモバイルでのテレビ視聴を提案するとともに、テレビの視聴が減少している20~40代に対しても、コンテンツ利用の幅を広げてもらうことを意識したという。
そこでJ:COM MOBILEでは、同社の映像配信サービス「J:COMオンデマンド」を利用する際のパケット通信料をカウントせず、無料で利用できるようにした。J:COM MOBILEはauのLTEネットワークを採用しており、標準で3Gバイト分のLTEによる高速通信(下り最大150Mbps)を利用できるほか、ワイヤアンドワイヤレスの公衆無線LAN「Wi2 300」も、2016年6月までは追加料金なしで利用できる。
J:COMオンデマンドの通信料はLTE回線でも無料となるため、たとえばHVGAW(640×360)の画質で毎日1時間ドラマを視聴しても、約18Gバイト分のパケット通信料はかからない。それだけに「映像を楽しむ人には圧倒的に有利なプラン」と、牧氏はサービスの優位性をアピールした。
そしてもう1つの要素は、スマートフォンの成長に陰りが見られることだ。国内の携帯電話の端末出荷台数を見ると、スマートフォンが伸び悩む一方で、フィーチャーフォンは根強い支持を受けている。そうしたことから、サービス開始時にはスマートフォンで一般的なストレート形状のものではなく、折り畳みスタイルのものを提供するに至ったのだそうだ。
実際、10月29日のJ:COM MOBILEサービス開始と同時に提供される端末は、LGエレクトロニクス製の折り畳み型VoLTE対応Androidスマートフォン「Wine Smart」(LGS01)になる。この端末はダイヤルキーを搭載し、フィーチャーフォンと同じ感覚でメールや電話ができる一方、タッチ操作に対応し、Google Playからアプリをダウンロードして追加できるなど、スマートフォンとしての機能は維持されている。
さらに、J:COM MOBILEでは、サポートの充実も大きなポイントになると、牧氏は話す。J:COMはそれぞれ3000人を超える訪問販売スタッフやサービスエンジニアを抱えており、特に訪問でのサポートに強みを持っている。そうしたCATVでのサポート体制の充実をモバイルでも活用していく方針だ。具体的には、スマートフォンを利用する際に必要な初期設定やIDの登録などを無料かつリモートで代行してくれるほか、月額500円で電話や訪問、リモートでのサポートが受けられる「おまかせサポート」などを利用できるとしている。
J:COM MOBILEの料金は、音声通話と3Gバイトの高速データ通信が付いたスマートフォン向けの料金プラン「スマホセット」で2980円と、他のMVNOより割高になる。この点について牧氏はサービスやサポートの違いに加え、「速度がしっかり出るようにしているし、キャリアと端末との接続をしっかりやっている」と、品質面に力を入れていることが大きいと話した。
またJ:COMでは、LTE通信機能を備えた8インチタブレット「LG G Pad 8.0 L Edition」を用いたデータ通信サービス「TV Everywhere」も提供するとしている。これは従来のWi-Fiタブレット向けのテレビ視聴サービス「J:COM TV with タブレット」を拡張し、auのLTE回線を使って宅外でも利用できるようにしたもので、CATVサービスとセットで提供する。こちらは高速データ通信容量が1Gバイトで、月額980円で利用できるという。
ほかにもJ:COMは、日本ケーブルテレビ連盟が推進する「ケーブルスマホ」のSIMも、10月29日より販売するとしている。こちらはNTTドコモ回線を用いたSIMのみの提供となっており、高速通信容量3バイトで、データ通信のみで月額900円、音声通話付きで月額1600円となる。ただしJ:COMとしては、独自サービスであるスマホセットとTV Everywhereの販売に重点を置く方針だという。いずれのサービスも、エリア外でのサポート対応ができないことから、販売エリアはJ:COMのエリア内に限定されるとしている。
最後に牧氏は、今後の展開について語った。サービス開始当初はJ:COMの主要ターゲットとなる50~70代を重視したラインアップとなっているが、2016年春にはユーザーの幅を広げるべく、新端末も予定しているとのこと。具体的には、防水対応のストレート型のスマートフォンと、10インチの防水タブレットを投入する予定だとした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果