全チームのプレゼン終了後、5人の審査委員と大会委員長である東京工業大学 佐藤誠教授を交えた6人によって、主催者3賞の選定会議が開かれ、主催者3賞と協賛大学・企業によるスポンサー賞が発表された。
主催者3賞の1つである「触ってHappy賞」。参加者の投票で決定される賞で、受賞は「オリオンをなぞる!!」チームの作品「オリオンの憂鬱」に決定した。これは“星座の可触化”を目指したもので、星座の画像に触れると星のある部分に触感があり、何度も触れることで、星座の形を視覚だけでなく触覚としても記憶できるというものだ。
続いて、「触ってすごい賞」。審査員によって最も触覚技術を生かしていると評価されたチームに贈られる。受賞は「ハフミ」チームの作品「モフミ」となった。
女子受けのするぬいぐるみが、実はおじさんの頭とつながっている……というもので、女の子がぬいぐるみを撫でると、その触感がおじさんのかぶっているヘルメット型デバイスを通して伝わり、おじさんが女の子に頭を撫でられたような気分になれるというものだ。触覚だけでなくVR、テレイグジスタンス(遠隔臨場感)的要素を包含した作品となった。
最後に「大賞」。審査員によって最も新しい触覚体験を作り出したと評価されたチームに贈られる。大賞は、「触っちゃダメゼッタイ!」チームによる「ピンポンダッシュ スクリーマーズ」「触っちゃダメ Glass BOX」「誰かいるDoor」の三部作に贈られた。これらの作品は、たとえば子どもが触ってはいけないものを分からせるための方法として、ピクトグラムや文字といった視覚刺激、ブザー、サイレンのような聴覚刺激のほか、触覚刺激も利用しようと考え出されたものである。
「ピンポンダッシュ スクリーマーズ」は、ドアホンのボタンをわざと押す行為「ピンポンダッシュ」をする子どもに対して、子どもがボタンを押すと目の前のモニターに大量のムカデが這う映像を映し出し、さらに、電気刺激で自分の指にムカデが這っているような擬似触覚刺激を与えることで、ピンポンダッシュのトラウマを子どもに与える装置としてプロトタイピングされた作品である。
2014年と比較して大学よりも企業協賛の比重が増えたためか、特殊なデバイスを使ってインパクトのある作品を目指したものよりも、生活の中で実際に使えそうなアイデアをストレートに形にしたものが多かった。
たとえば、叔母が遠隔にいる甥っ子のほっぺを触りたいという欲求を実現させる「Commutime(コミュタイム)」や、話しかけたり、耳をつまんだりすると抱きしめてくるぬいぐるみ「抱きしめくまきゅ」は、離れて暮らしていたり、生活時間が合わない人同士のコミュニケーションに、テキストや画像だけでなく、触感を加えることで新たな体験を生み出す可能性を示してくれた。
VRの流行に牽引されて、触覚技術もエンターテイメント方向での利用に目が向きがちであるが、身近な生活に溶け込んだ「使える触覚」のあり方を、ショッカソン2015で提示できたことは大きな収穫といえる。
また、協賛大学や企業においては、触覚技術を普及させるために、デバイスやサービスの提供方法に工夫が必要なことを実感したようだった。たとえば、2014年から参加している電気通信大学梶本研究室の「電気触覚ディスプレイ」は、昨年のショッカソン参加の際に、参加者がすぐに使えるように「開発ツール」を用意したおかげで、その後、研究成果を広く普及させることに役立ったという。
開発時間の短いハッカソンイベントに企業が参加する際には、使いやすいAPIやソフトウェア開発キットとセットにすると良いなど、オープンイノベーションのヒントもいくつか見つけることができた。
今回参加したチームのいくつかは、イベント終了後も開発を続けていくと話していた。今後、ショッカソンから新しい製品やサービスが生まれることを期待したい。
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