IBMの研究者らは、コンピューティング業界における目覚ましい進化を持続させる可能性を秘める、有望な技術の前に立ちはだかっていた問題を解決した。
コンピュータが冷蔵庫サイズのメインフレームからポケットに入るスマートフォンにまで進化を遂げることができたのは、チップの小型化と高速化が絶えることなく続けられてきたためだ。しかし、電子部品のサイズが原子レベルにまで縮小する中、この進化の中心にあった微細化は深刻な工学的問題に直面している。
IBMは米国時間10月1日、30億ドルを投入して取り組んでいる、カーボンナノチューブを基盤としたチップ開発を目指す研究の一環として、さらなる微細化が可能であることを示す研究結果を公表した。このナノチューブは中空の円筒形で、その壁は格子状に結合した炭素原子の単一層でできている。鶏舎用の金網を丸めて筒状にしたものを非常に小さくしたもののように見えるが、その厚さは人間の髪の毛のおよそ1万分の1だ。
チップのさらなる小型化と高速化は、ムーアの法則と呼ばれるコンピューティング業界における何十年間にも及ぶこれまでの進化を維持するための鍵となる要素だ。約2年ごとに登場する新しいチップ製造技術に支えられるこの進化によって、コンピュータはデスクからポケット、そして今では手首にも提供されるようになった。Googleによる理にかなったウェブサービスも、Facebookによる写真内の友人の顔認識も、それに支えられている。しかし、その進化は現在減速しており、万が一停止することになれば、未来のコンピューティングにおける革新的なアイデアの多くが、進化のチャンスを逃すことになる。
マイクロプロセッサ業界全体が、今日の限界に達した後の活路を模索する中、IBMはカーボンナノチューブに特に着目している。将来的には、巨大なスーパーコンピュータから、衣服や自動車のタイヤゲージなどさまざまな場所に使われる超小型コンピュータにいたるまでのあらゆるチップに、ナノチューブが採用されるようになると期待している。
今日のチップトランジスタはシリコンを用いて製造されている。シリコンは、さまざまな状況の下で電気を通したり通さなかったりすることができ、その性質が利用されている。カーボンナノチューブも、データを処理可能なオンオフスイッチとして機能することのできる、この「半導体」の性質を持つ。
IBMが考案したのは、ナノチューブが「オン」状態のときに電気を通すように、ナノチューブをマイクロプロセッサの残りの部分と接続するためのより良い方法だ。これまで、抵抗値が高いために電子の流れが阻止されていたが、IBMは、ナノチューブの各端を金属モリブデンに結合する方法を考案した。結合材自体は非常に小さく、それは、微細なチップ回路を製造するための必須要件だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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