「SNSなら個人情報が得られる」ことは分かっているため、自ら精神的にストーカー化する中高生もいる。高校3年女子A美は、恋人にLINEを送っても既読にならない時、恋人のTwitterアカウントで動向をチェックするという。「Twitterを見れば、今はカラオケ中だからスマホを見ていないだけで、嫌われたわけじゃないと分かってほっとする」。
心配性で自分に自信がないA美は、付き合う前から恋人のSNSはすべてチェックしていたという。「過去のツイートはすべてチェックしたから、誰と親しいとか、どのサッカーチームが好きかとか分かって役立った」。同時に、恋人が以前付き合っていた元彼女とまだつながっているのが分かってはがゆいそうだ。「別れたならTwitter上でも切れてほしいけど、言うと私が調べたことが分かっちゃうから言えない」。
SNSがあることで、知らなくてもいい情報を得てイライラすることもある。それでもA美は、「SNSがあってよかった。なかったらもっと彼にあれこれ質問したり、LINEを送りすぎて嫌われていたと思うから」。
高校2年生のB奈は、友達にLINEを送ってもなかなか既読にならない時、相手のTwitterをチェックするという。「LINEは見てないのにTwitterはやっていたら、Twitterができるのにと腹が立つ。見つけて怒りのツイート送ったら、すぐに謝ってきた」。
mixi時代は、「最終ログイン○分前」という表示や「足あと」などで、相手がどのような状態かある程度知ることができた。中高生では、このようにTwitterやLINEで相手の状況を知るのが当たり前になってきている。中にはA美のように、相手の情報は主にSNSやブログなどで得るという中高生も現れている。
「SNSは誰が見るか分からない公の場」と私はよく言う。だからこそ他人が不快に思うことは書いてはいけないし、個人情報も書いてはいけないのだ。友達になる相手を選び、公開範囲も限定してもなお、個人情報や問題あることは書いてはいけない。公開しすぎはサイバーストーカーや炎上事件を招くことになることを忘れてはならない。
ネットで相手についての個人情報を得るのは簡単だ。しかし、得られるのはネットでの情報にすぎず、ネットに出ていないことは知ることはできない。相手の内面や大切なことについては知り得ないのだ。本当に相手について知りたいなら、直接相手と会って話をすべきだろう。直接会うことで、お互いに信頼や絆が深まる効果もあるだろう。
傷つかないコミュニケーションを望んでいては、いつまでも本当の関係は結べないし、相手との距離感もおかしくなる。特に若いうちはしっかりと相手と向き合い、人間関係を築く基本となる力を身に付けるべき時ではないだろうか。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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