一大産業となる可能性を秘めるドローン。そのポテンシャルは未知数で、2020年までに市場規模は10兆円とも、それ以上になるともいわれている。
ドローンはまた、スポーツの文脈でも大きく発展しようとしている。米国が「ドローンレース」をオリンピックのモータースポーツ部門に加えるという話がでているほどだ。
しかし、日本では海外に比べドローンレースの認知・普及が遅れており、どのようなものなのかはっきり知る人は少ないだろう。そこで今回は、海外と日本のイベントに触れながら、ドローンレースとはどのようなものなのか紹介したい。
ドローンレースとは通常「FPV(First Person View)」レースのことを指す。FPVは訳すと「一人称視点」というところになるだろう。要するに、パイロットの視点でドローンを操縦するということだ。
2014年ごろから北米、欧州、オーストラリアなどで大型のレースイベントが開催されるようになってきた。各レースの模様はYoutubeなどにアップされ、視聴回数は数百万ビューを超えるまでになっている。
時速100km近くに達することもあるFPVの映像は映画「スターウォーズ」のポッドレースさながらの迫力あるもので、多くの人を魅了している。
2015年7月には、ドローンレース世界大会「National Drone Racing Championships」が米カリフォルニアで開催された。レースには約120人のパイロットが参加。スポンサー数は60社以上、地元当局が後援するなど、盛り上がりを見せた大会となった。
賞金は2万5000ドルで、この額の賞金が用意されるのは世界初だろう。そしてさらに、この世界大会の第2回目もすでに準備が始まっている。賞金総額は1回目の4倍となる10万ドルだ。
日本でもドローンレースを普及させようとする動きがある。これまではラジコン愛好家らが開催してきた小規模なものが主だったが、現在、秋田県仙北市の近未来技術特区では、国際的なドローンレース大会に向けての準備が進んでいる。
しかし、日本でのドローンレースは海外に比べ認知・普及が遅れていることは否めないだろう。
これには映像通信の問題が絡んでいるように思える。海外のFPVレースでは通常、5.8GHzの映像通信デバイスを使用するが、日本ではアマチュア無線免許なしでこの周波数を使用することができない。さらに無線機は総務省が許可したものだけが使用できるという状況になっている。総務省から許可が下りるまでに約1ヵ月かかるという。
筆者が住むシンガポールでは、このような面倒なプロセスはなく、すぐに飛ばせる環境だ。
こうした理由から、日本ではFPVは敷居が高く、ドローンレースを始めたいと思っている人も足踏みしてしまうことが多い。そこで、無線免許を持っていない人でも気軽にドローンレースができるイベントを開催しようとする動きも活発化している。これらのレースではFPVではなく、目視で競い合う。
筆者も企画に携わるマイクロアド運営のメディア「Catalyst」が9月6日に開催したイベントもそのようなドローンレースの1つだ。東京のクリエイティブスペース「3331 Arts Chiyoda」で開かれたこのイベントには、20人以上が参加した。
レースはDJIのPhantomやパロットのBebopなどで競う既製品部門と、自作したドローンで競う自作品部門の2部構成で開催された。どちらの部門も目視でのレースだ。普段FPVレースに慣れている人も、目視での操縦には苦戦し、クラッシュが続出した。
レースのダイジェスト映像からもクラッシュが多かったことが分かる。しかし、DJIの最新モデル「Phantom 3 Standard」が優勝賞品として用意されたこともあり、レースは非常に盛り上がった。
無線免許を持っていない人でも気軽に参加できるドローンレースが増えることで、レースに興味を持つ人は増えるはずだ。Catalystでは、子どもや女性も気軽に参加できるドローンレースを開催していく方針だ。
今後、世界ではドローン産業創出に向けた動きが加速することが予想されるが、日本ではまだ「怖いもの」として捉えられている。普及させるには、ドローンの可能性や楽しさを伝えることが重要になってくるだろう。ドローンレースが、それを達成する有効手段の1つになるのは間違いない。
(編集協力:岡徳之)
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