ウェアラブルテクノロジのカンファレンス「Wearable Tech Expo in Tokyo 2015」で、「スマートグラスBtoB導入にある障壁と未来」と題したトークセッションが行われた。メガネ型ウェアラブル端末を2015年度内にも発売する東芝の研究開発統括部マーケティング戦略室主務 メガネ型ウェアラブル端末事業のプロジェクトリーダーを務める金子祐紀が登壇し、同社の製品を紹介した。
2014年のCEATECで発表した、同社のメガネ型ウェアラブル端末。金子氏によると端末の特徴はまず"内面反射"と呼ばれる方式を採用していることだという。これにより、視界を邪魔せず、広い視野を確保できるのがメリットだと説明した。
また、"小型投影モジュール"という独自の投映機構を搭載することにより、重量42gという小型軽量化を実現したこともポイントだ。「メガネ業界では"50"という数字がマジックナンバーと呼ばれてるので、軽量化には特にこだわった」と金子氏。さらに、メガネとしての装着感に加えて、違和感なく装着できるデザイン性の追求にも力を入れているとした。
2014年4月にグーグルグラスが発売されて以降、東芝をはじめ、ソニーなど日本国内の大手メーカーも次々と参入するスマートグラスだが、特に期待されているのは業務用途だ。金子氏によると、2014年のCEATECで発表して以来、既に300社以上の企業から問い合わせがあったという。
一方、製品化にあたっては、企業の求めるニーズとは別に、開発側には健康面への影響などの課題も同時にクリアしていく必要がある。そこで、眼科医としての立場からさまざまな実験結果などを通して東芝のスマートグラスの開発に協力しているのが大阪大学 医学部教授の不二門尚氏だ。
不二門氏は、3D映像に比べるとスマートグラスの健康への影響は小さいと話す。スマートグラスは3D映像と同じように虚像を見ているのに近い状態だが、東芝のスマートグラスの試作品を用いて行った目の疲労度を測定する実験では、実像を注視した場合との差異はなく、「目に対する負担はあまり変わらない」と結論付けた。また、紙媒体とスマートグラスで読書前後の疲労度の比較を行った試験でも、スコアに有意な差は見られなかったとという。
以上のことから、「15分程度のスマートグラスの連続使用であれば、眼疲労を及ぼす可能性は低い」と不二門氏。しかし、人間の目が日常生活で一番楽に見ている距離は1m程度先なのに対して、スマートグラスを業務用途で使う場合は手元で使うケースが多いことが想定されるため、「手元と虚像との距離や、どこにどのようなタイミングで表示させるかを調整する必要がある」と述べた。
不二門氏は、スマートグラスを業務用途で普及させるための開発のポイントとして、(1)疲れさせないこと、(2)集中力を損なわせないこと──の2点を挙げる。その上で、「1日8時間使おうとすると、重量の軽さと目への影響があるので、まずそこから押さえる必要がある。しかも役に立つということが大切」と、医学や医療工学的見地からのスマートグラスのあるべき未来像を提案した。
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