アドテク大手のフリークアウトは7月、トルコのイスタンブールに子会社FreakOut Turkeyを設立して事業を開始した。主力は日本でも展開しているスマートフォン向けネイティブアドネットワーク事業「Hike by M.T.burn」だ。
トルコは近年、企業の中東地域の統括拠点として注目されている。EUと関税同盟を結んでいるため、欧州への輸出拠点、また地政学的にロシア、中央アジア、中東、アフリカなどへの輸出拠点になりうる優位性があるためだ。
ロシア、ドイツ、イスラエルのIT企業も多く進出しており、まさに中東アジア経済の「ハブ」となっている。トルコはモバイル普及率が67%以上、スマートフォン普及率は約50%で、フリークアウトの主戦場であるネット広告市場も拡大中だ。
同社はネイティブアドネットワークの広告在庫を確保すべく提携メディアを開拓し、次に広告主企業への営業を開始する。10月2週目に拠点とサービス「Hike」の提供開始を予定しており、それから約1年ほどかけて同国のネット広告市場で頭角を現していきたい考えだ。
拠点を運営するのは日本人駐在員である時吉啓司氏。日本人スタッフは彼のみで、ほかの正社員2人とインターン1人は現地スタッフ。同氏にトルコのビジネス事情を聞いた。
法人登記にも時間がかかりますが、それよりも大変なのは就労ビザの取得と滞在許可証です。就労ビザを取得する方法は2つあり、現地で取得する方法と日本にいながら取得する方法があります。就労ビザを取得できれば滞在許可もおります。
多くの日本人は滞在許可がおりたあとに、トルコで就労ビザを取得するようです。滞在許可は、最近法律が変わり、中央政府の審査を受けるために予約が必要になったのですが、その体制が十分に機能せずパンクし時間がかかっています。
会社設立に関しては、外国人の雇用人数の規定、もしくは給与額の問題をクリアしなければいけません。外国人を1人雇用するためには、現地の人を5人雇用しなければなりません。私のような企業の立ち上げを担う人物は「キーパーソン」と呼ばれ、先述の外国人の雇用人数の規定からは除外されます。しかし、キーパーソンとして働くためには、外国人従業員の給与を現地の最低賃金の6.5倍以上にしなければいけません。トルコ人の最低賃金は日本人の水準よりもかなり低いため、そこまで負担にはなりません。
ほかには、日本で所得がある場合は、全世界所得に所得税がトルコで課せられるという問題もあります。
LinkedInを利用して募集したところ、数百人から応募がきました。運がよかったのですが、現地のIT系メディアの記者が私のLinkedInのアカウントページを見つけて、日本で上場しているIT企業がトルコに進出して採用活動を始めると記事にしてくれたのです。
広告主企業や媒体社など、社外のマネジメント層とのビジネスでは基本的に英語を話しますが、現場の人たちは英語が話せないので対応を現地スタッフに任せています。トルコ語の方が彼らの心理的ハードルを下げることができるからです。
スタッフとは密にコミュニケーションを取るようにしています。基本的にトルコ人は謙虚な日本人と相性がよいと思います。たとえば「自分は恵まれている」という話はせずに、「自分なんて大したことない。とても困っているんだ」と話すと助けてくれたりします。
トルコは親日国家で、こちらが日本人と分かると友好的です。
食事の面では、トルコ料理は世界3大料理の1つということもあり、現地ではトルコ料理を食べることが多いです。トルコは世界でも珍しくチャイナタウンが存在しない国の1つで中華料理屋が少ないです。また、日本食レストランもまだあまり日本から進出していません。
保険は、外国人が行く病院が国の保険の適応外の場合が多く、現地の外国人の多くは民間の保険に入るか、自国での社会保険に入るしか選択がありません。現地に住む多くの日本人は、日本の保険と現地の民間保険に加入している人が多いです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス