2020年に開催される東京オリンピックがもたらす日本全国の経済波及効果は、少なくとも数兆円と言われている。過去を振り返っても、オリンピックとテクノロジの発展は密接な関係にある。世界的にスマートフォンがあたりまえに使われるようになった今、テクノロジを活用したさまざまな取り組みが、2020年をターゲットに進んでいる。果たして、生活、働き方、モノづくりなど、各産業や業界はどのようにパラダイムシフトしていくのか。
今回のテーマは「宿泊」。観光庁によれば国内における6月の宿泊者数は約3700万人泊で、このうち訪日外国人の宿泊者数は、前年同月比で51.7%増の約530万人泊となった。東京オリンピックが開催される2020年には、訪日外国人が2000万人を超えると言われており、一部では“ホテル不足”に陥るのではと懸念する声もある。こうした背景もあり、日本でも注目が高まっているのが、米国発の空き部屋シェアサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」だ。
Airbnbは、旅行者が現地の人から空き家や使っていない部屋を借りられるサービス。現在は日本を含め190カ国で展開し、世界的に急成長している。ただし、日本では宿泊料をとって人を泊めてしまうと「旅館業法」に抵触するため“グレー”な状態であり、今後の規制緩和の有無が普及に影響を与えそうだ。Airbnb日本法人代表の田邉泰之氏に、現状の国内外での利用状況や、Airbnbのもたらす価値を聞いた。
現在は190カ国の3万4000都市以上で展開しており、物件数は日々伸びているのですが、現時点で150万軒を超えています。日本でも、1万3000軒以上の物件がありまして、2014年と比較して伸び率は3倍以上です。また、訪日外国人の利用者も4倍のペースで増えている状況です。
オーナーさんは単純に性別や年齢では区切りにくいですね。20代の若い方もいれば高齢の方もいます。76歳のHarukoさんという方は、世田谷でお部屋を貸しているのですが、大人気でたくさんの方が借りに来るそうです。そのほかにも、泊まった方に地元を案内したりして“おもてなし”を楽しんでいる方や、海外の方と交流することで語学を磨いている方など、皆さんさまざまな目的をもって貸し出されています。
ホスト側(貸し主)としては、海外へ行かなくてもインドやヨーロッパなどいろいろな国の方と交流できて、お互いの文化を知ることができます。あとは、地元に経済効果をもたらすということですね。普段来ることのない海外の方が宿泊することで、地元のカフェやレストラン、コンビニなどにもお金が落ちるというベネフィットがあります。
ゲスト側(借り主)としては、もともと旅先で何かを見て帰ってくることが多かったと思うのですが、いま増えているのは旅先で「体験したい」という方です。そういう意味で、Airbnbでは地元の家に実際に住むことで目線が変わるというか、地元の方と同じようなニーズが発生するんですね。翌日の朝ごはんを買いに行かなきゃいけないとか。そうしてスーパーや商店街に行くことで、地元の生活を体験できる楽しみがあります。
あとは、部屋を貸し出しているホストの方と交流できるので、地元の方しか知らないような情報を入手できます。それがまた体験につながると言いますか、自分だったら入らなかったレストランに入ったりするようになるので、体験がより楽しくなるといったメリットもあります。
我々の物件を見ていただきますと、一軒まるまる借りるタイプと、家の中の一部屋を借りるタイプ、鍵がかかる部屋はなく共有スペースの中で生活するタイプの3つがあります。その中で、それぞれのホストが提供したい形でおもてなしをされていますね。
部屋を借りる前や予約が成立した際の情報交換も、もちろんあるのですが、宿泊先に置き手紙をされているホストもいます。家にいらっしゃる場合もあるので、(ゲストが)家についてから直接お話することもありますね。時間があれば、一緒に家の周辺を歩いて回ったりとか、本当にいろいろなパターンがあるのがAirbnbならではの面白さです。自分にカスタマイズされた体験ができることが特徴ですね。
実際に調査しているわけではないので分かりませんが、もともと対象者が違うのだと思います。Airbnbに泊まりたい方は、地元を体験したいという方々ですので、単純にホテルがないからAirbnbを使いたいという方とは違う層に利用されている気がします。
やはり、ホテルのようなサービスではありませんので、「こんなこと聞いてないよ」という話にはならないようにしなければいけないと思っています。我々としても、できるだけしっかり情報を提供して、Airbnbの体験や実際に家に泊まるとはどういうことかをご理解いただいて使っていただいています。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス