世界50カ国以上でサービスを実施し、会員数は6500万人以上という巨大映像配信サービス「Netflix」が、9月2日に日本でのサービスを開始する。オリジナルコンテンツを多数そろえ、4K、HDRでの映像配信も視野に入れるNetflixは、日本のVOD市場にどんな影響をもたらすのか。「Netflix株式会社」代表取締役社長であるGreg Peters(グレッグ・ピーターズ)氏に聞いた。
Netflixは米国でサービスを開始し、その後カナダ、欧州とサービスを拡大させてきました。米国の次にカナダでサービスを開始した理由は、米国から近く、よく知っている地域だったからです。その後北欧やオセアニアなど、グローバルな配信ができるプラットフォームを整えてきました。
次のステップとしてアジアへの進出を考えたときに、日本を拠点にしたいと思いました。日本は市場規模が大きいですし、ブロードバンド環境や課金システムも整っている。しかしそれ以上に重要視したのは、日本の方々は映像作品を愛しているということでした。
日本には素晴らしい映像作品がたくさんありますし、優れたクリエーターも数多くいます。ただそうした作品を海外にきちんと届けられているかといったら、そうではない部分もある。日本のコンテンツを輸出するという意味でも、サービス開始のタイミングは今だと思いました。
確かに接続率は低いかもしれませんが、その理由の1つはネットにつなげてまで見たいと思わせるコンテンツに触れていないためだと思います。この問題は今までサービスを立ち上げてきた国々でも直面してきました。しかし、VODサービスを展開することによって、接続率は上がっていきます。私たちはサービスを立ち上げたすべての国で、こうした体験をしてきました。
スタート時は、映像配信やネットサービスに興味のある方々からユーザーになっていただけると考えています。その先の人々にリーチするために必要なのは口コミですね。ユーザーの方に「Netflixは良かった」ということを、家族や友人、同僚の人々に伝えてもらう。今までの地域でも口コミはサービスの成長において重要な役割を果たしてきました。
Netflixでは、地域ごとにオリジナル作品を提供しています。これは基本戦略なのですが、日本はほかの地域に比べてローカルコンテンツへの愛が非常に大きいんですね。ですから、サービス開始時にはフジテレビジョンとのコンテンツ提携による「テラスハウス」新シーズン、「アンダーウェア」など、日本のオリジナルコンテンツを用意します。他地域よりも加速させた形でローカルコンテンツを用意するのは日本ならではの戦略といえます。
もう1つ戦略として考えているのは、コンテンツの幅広さです。あるお客さまに響かなかったコンテンツでも別のお客さまは見たいと感じられるものかもしれない。種類を多く取りそろえることで、あらゆるお客さまにリーチできるようなサービスにしていきます。
そのほか「デアデビル」「sense8」などの他国で人気のオリジナルコンテンツも用意しますし、「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」はシーズン1~3を、9月2日から一挙配信します。
Netflixでは、6500万人以上を持つ会員の視聴履歴からデータドリブンによる施策を実行していますが、大切なのはデータから導き出される答えではなく、その答えを実行し、調整し、再度トライするという反復作業だと思います。
ビッグデータを活用しても、成功確実ということはなくて、調整を加えながらトライし続けることで、サービスを向上させられるのだと考えています。
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