このようにみてくると、海外で特許出願をする上では、国際出願の費用50万円前後がコストに見合うかどうかの判断が大切になってきます。
仮に日本出願の申請をプロダクトのローンチ前日に完了したとすると、ローンチから1年後には将来の事業計画がより具体化されて、海外展開の可能性についても社内で議論されている可能性があります。とはいえ、この段階ではまだ実際に海外展開を始める時期、国などが固まっていないかもしれません。
そんな状況では海外への特許出願に大きな費用を掛けるわけにはいかない、と断念してしまっているケースも多々あります。しかし、一定のコストを掛けることで、国内移行までの1年半の猶予をさらに手に入れられるのはとても大事なポイントになります。国内移行の段階では、ローンチから2年半。成長をとげて、財務状況も大幅に変化している可能性が十分にあると思いますが、そのときに国際出願をしておけばよかったと振り返っても打つことのできる手は一切ありません。
他社に対する優位性の源泉は、整理の仕方はいくつかあるとしても、以下の3つに大別されます。
日本で築いた優位性も国境を越えると前提となる条件が異なることなどから崩れてしまいがち。しかし、独自技術は国境を越えても優位性が失われにくい傾向にあるため、海外展開をする上で大きな武器になります。そうした独自技術の獲得を助ける有力な手段である特許権(第5回)の海外での取得を早々に諦めてしまうことは、海外市場での飛躍の芽を摘んでしまうことになりかねません。
日本出願から1年を機に、自社の特許出願でカバーされているテクノロジの意義について改めて見直し、国際出願のコストに見合う価値があるか、議論してみてください。
ご質問ありましたら Twitter(@kan_otani)で。
大谷 寛(おおたに かん)
弁理士
2003年 慶應義塾大学理工学部卒業。2005年 ハーバード大学大学院博士課程中退(応用物理学修士)。2014年 主要業界誌二誌 Managing IP 及び Intellectual Asset Management により、特許分野で各国を代表する専門家の一人に選ばれる。
専門は、電子デバイス・通信・ソフトウェア分野を中心とした特許紛争・国内外特許出願と、スタートアップ・中小企業のIP戦略実行支援。
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