ハリウッドメジャースタジオ5社は7月31日、デジタル配信サービス体験セミナーを開催した。VOD市場の現状と今後について触れたほか、サービスの紹介、タッチ&トライなどを実施した。
主催は、20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン、NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、ワーナー エンターテイメント ジャパン、ウォルト・ディズニー・ジャパン。拡大中のVODサービスに対し、理解を深めることが狙いだ。
「デジタル配信サービス市場の現状と今後について」をテーマにプレゼンテーションを実施した、野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部メディアコンテンツグループマネージャーである三宅洋一郎氏は「BDやDVDなどのパッケージメディアは、市場が縮小傾向にあり、一方で動画配信サービスは、インフラの普及や各サービスの品質改善などにより、市場が拡大しつつある」と現状を説明する。
国内のインターネット利用率は、2013年末の段階で83%まで増加しており、なかでもスマートフォン、タブレットでの伸びが著しい。年代別のスマートフォン経由でのインターネット利用率も、20代で8割、30代で7割をカバーしており、50歳未満ではどの世代も半数以上が利用しているのが実態だ。
三宅氏によると、インターネット環境の整備とともに、有料動画配信サービスの利用率も徐々にではあるが増加しているとのこと。2014年7月段階で、利用経験者は9.6%を数える。
有料動画配信サービスには、定額制のSVOD、単品販売で一定期間のみ視聴できるTVOD、単品販売でずっと視聴ができるESTと3つのタイプがある。その中でもSVODを利用している人が最も多く、TVOD、EST利用者はほぼ同数程度になるという。
しかし映像コンテンツファンが動画配信サービスを使用しているからといって、現行のDVD、BDのレンタルや購入、有料放送などの利用料が減っているとは言い切れない。
BD、DVDをレンタルしている人ほど、有料動画配信サービスを利用しており、購入者では、その傾向がより顕著になることがわかっているという。有料放送に関しても、同様の結果となった。
実際に映像配信サービスは、どのように利用されているのだろうか。三宅氏によると、2014年におけるスマートフォンの個人普及率は5割を超えており、2020年には約75%にまで増加する見込み。これがインフラとして進んでいくと予測する。
一方、今までコンテンツの視聴デバイスとして長く使用されてきたテレビは、インターネットに接続できるスマートテレビが2020年度には約3000万世帯にまで拡大すると予想する。ただし、テレビにおけるインターネット接続率は、現状それほど高くなく、2014年調査時でも常時接続率は14%にとどまる。
インフラの普及と動画配信サービスの向上により、利用者は増えつつある。三宅氏は「2020年に2000億円規模に達すると予測している。普及における課題の1つは認知度。2015年度でも市場規模は1480億円程度となっており、今後の成長の余地が大きい市場だと思う」とした。
第2部として、テクノロジジャーナリストである本田雅一氏による「デジタル配信サービスの紹介と体験」が実施された。映像と同様に手で触れられるパッケージメディアから、手で触れることができないクラウドへと変化している音楽ビジネスを例に挙げつつ、「映像と音楽は似ているけれど、違う部分もある」と指摘。SVOD、TVOD、ESTという種類から、現在スタートしている映像配信サービス業者の位置付けも紹介した。
本田氏は「映像配信サービスは、放送規格やパッケージ規格にとらわれない、従来とは異なる動線でコンテンツとの出会いを作れる」などのメリットを話す。しかし、旧来からの映像ファンは「使いこなしが面倒、どのサービスをつかえばいいのかわからない」などの不満が生じているという。
これに対し本田氏は「映像配信サービスには、従来のメディアとは異なる特徴があり、今までの映像ファンたちが求める作品との出会いも、正しい情報を伝えることで、解決ができるものもある。パッケージメディアと映像配信サービスは異なるニーズの中ですみ分けられるもので、つぶしあいをしているわけではない」とまとめた。
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