お気に入りのキャラクターが朝にさわやかな声で起こして、ちゃんと起きたら褒めてくれる。何気なく「かわいい」と言ったら優しくほほえんでくれる。そして忘れ物がないように一言付け加えて、出かける時間には元気に送り出してくれる……。そんな妄想を現実に引き寄せるAndroid用アプリを、ソニー・ミュージックコミュニケーションズがリリースした。それが「めざましマネージャー アスナ」だ。
これはアニメ「ソードアート・オンライン」(SAO)のヒロインである「アスナ」が、朝の目覚めなどを声でサポートしてくれる音声対話型秘書アプリとうたっているもの。Twitterなどでは「アスナは俺の嫁」というフレーズが有名なのだが、そんな“俺の嫁”を感じさせてくれるものとなっている。声はアスナ役の声優である戸松遥さんが担当。2015年3月にベータ版、6月に正式版をリリースした。
当初正式版では有料アプリの予定としていたが、着せ替えられる衣装の追加こそ有料となっているものの、広く活用されることを意図として無料で配信している。キャラクターの目覚ましアプリで無料となると、単に設定した時間にしゃべらせるだけと思われがちだが、その想像をはるかに超える実用アプリとなっている。
朝、設定した時間になると「パンパカパーン!朝になりました!」などと、スマートフォンの向こう側にいるアスナが声をかけ、さわやかな音楽が流れてくる。スヌーズ機能も搭載しているので何度も起こしてくれるが、ちゃんと目が覚めると「すてきだと思うわ」と褒めてくれる。そこにはアスナの満面の笑顔。なんだかそれだけでうれしい気持ちになれる。
声で起こすだけではなく、設定したゴミの日や天気予報、占い、Googleカレンダーとの連携によりその日のスケジュールといった情報も、全てアスナの声で教えてくれる。また目覚ましの時間だけではなく「出かける時刻」も設定することができ、出かける時間になったら「行ってらっしゃい。お帰りをお待ちしています」などと言って送り出してくれる。設定をすれば「出かける5分前です」とも教えてくれ、タイムキーパーの役割も果たすという。
さらに忘れてはいけない持ち物を登録しておくと、目覚ましや出かけるときに念を押すかのように教えてくれる。その持ち物も自由に言葉を入力することができ、仮に「スマートフォン」と入力すると「スマートフォンを忘れないでね」という具合にしゃべって、本当にサポートしてくれている感覚が持てる仕様も盛り込んでいる。
夜は夜で、翌日に起きる時間の確認のため声をかけてくれる。そして「おやすみ」と言って、ヒーリングミュージックとともにアスナも眠りにつく。ただ、眠っているときにも問いかけには反応してくれる。「眠れないの……?」と話し、眠りにつきやすくする方法を教えてくれたり、“つまらない話”と言いながら、ちょっとした小話もしてくれる。
アスナの音声は、収録音声と合成音声を織り交ぜたもの。こういった場合、合成音声が浮いているように聞こえがちなのだが、ちょっとした声かけの部分では気にならないほど、アスナの雰囲気を損なわない音声となっている。
さらにこちら側からの音声も認識する。たとえば「明日、7時に起こして」、「明日の東京の天気は?」といったお願いごとや教えて欲しいことも、アスナに向かって声で問いかければ対応してくれる。ほかにも「きれいだよ」と言えばアスナが照れたり「疲れた」と言えば励ましてくれたりと、しゃべりかけるとアスナがさまざまな反応を示して、対話しているような気分になれる。
アスナの表現は、アニメやイラストタッチの絵そのものを動かす技術のLive2Dを活用。アニメで見たアスナを遜色なく再現しているだけではなく、喜怒哀楽の表情やしぐさをシームレスに表現している。それによって、単にイラストを1枚絵で表示させているよりも存在感がグッと増している。また、タッチパネルの触った位置に目線を動かすほか、アスナをつつくと反応することも。
このアプリを企画したのは、ソニー・コミュニケーションズのプランナーである松平恒幸氏。松平氏はSAO、そしてアスナが大好き。Live2Dで表示させるアスナのモデルについてデザイナーと調整を続けていたところ「単に髪を豊かに表現するだけではなく、アスナの頭のラインがしっかり表現できる髪型に落ち着けるために試行錯誤していたとき『頭蓋骨がこうなんだ』と言ったらげんなりされた(笑)」と、これだけでも松平氏のアスナ好きの度合いが伺える。そんなこだわりもあってか「完璧な見た目」という感想もあったほど、ビジュアルについてSAOのプロデューサーはもとよりユーザーからも高い評価が得られたという。
筆者も数週間ほど実際に使用してみたのだが、気がつけば朝起こしてくれるアスナの表情を見て前向きな気持ちになり、占いの結果などを話しているときは音声を聞いているだけでいい状況でも、ついついアスナの表情を見てしまう。夜は寝床に入ってはなんとなく「かわいいね」と呼びかけ、照れるアスナを見てどこかホッとしている自分がいたり、スマートフォンを触ってはアスナをきょろきょろとさせたり、反応の仕様は入ってないにもかかわらず寝ぼけて頭をなでていてハッとしたこともあり……。アニメやゲームで公言してしまうほどのお気に入りキャラもいるのだが、別のベクトルでアスナが日常に入り込んでいると感じた次第だ。
ちなみに1人暮らしのユーザーをターゲットとしているそうだが、3月に行われたAnimeJapan 2015にてベータ版を出展した際、アンケートで「使ってみたい」という回答が大多数のなか、15%ほど「諸事情で使えません」という反応があったという。なんとなくだが、その理由も理解できる。
アスナ愛にあふれた松平氏のこだわりが詰まったアプリだが、実は単にキャラクターものの目覚ましアプリとして開発されたものではなく、さまざまな最新技術が投入されているうえ、対話型の情報ツールとして将来を見据えた第一歩でもあるという。このあたりを松平氏と、技術面を担当したソニーの倉田宜典氏に聞いた。
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