強要した認識もない--東芝、“不適切会計”で社長など取締役8人が辞任 - (page 2)

 「だが、少なくとも社長に就任した2013年以降、過大な要求をした覚えはない。努力すればできるレベルである。努力をして届かないものであれば、必達目標値とはいえない。私自身が誰かからプレッシャーを受けていたという認識もない」(田中氏)

 また、「粉飾決算かどうかは定義による。第三者委員会の報告書では、不適切な会計処理という記載がされている」と田中氏は述べたが、「不適切な会計処理をしていたという認識はしていなかった。今後、第三者委員会の報告書を精査し、認識が間違っているのであれば改めたい」と繰り返した。

 そのほか、「若いときには、経理部門が“社長、これは駄目です”と言ってもらう役割を果たすと思っていた。その点では、もう少し経理部門を強化して、経理の人材育成、体制を確立した方がいいと思っている」と述べた。

報告書の中味には言及せず

 さらに田中氏は「やり残したことはいろいろある。高い収益性を持つNANDフラッシュメモリのような収益の柱をさらに2本、3本、4本と増やしていきたいと考えていた。その途上にあると思っている。だが、収益の柱を作るということと不適切な会計処理は必ずしも一致していないところがある。新たな体制では、収益の柱を5本まで作ることに取り組んでもらいたい」との考えを明らかにした。

 「140年の歴史でブランドイメージの毀損があったと認識している。こうした事案に一朝一夕では回復できない。20万人の従業員が一丸となり、室町会長兼社長、経営刷新委員会、社外専門家での再発防止策、ガバナンス、日々の活動として一日一日全力で取り組んでいく姿をご理解いただくしかない。時間がかかっても、やり遂げなくてはならない」(田中氏)

 7月21日付けで社長を辞任したことについて田中氏は、「6月の株主総会では、あくまでも暫定的な選任であった。そして、取締役と代表執行役社長を辞任することにしたのは、一刻も早く新たな体制で大きく毀損した東芝のブランドの回復すること、そして、最も重要だと思っているのは、日々誠実に対応している20万人の従業員に対して、けじめをつけて新たな気持ちで臨んでもらいたいと考えたことが理由である」と説明した。

 田中氏は、会見で「個別の事案に対しては回答を控える。第三者委員会の報告書をみてほしい」と、何度も繰り返すシーンがみられ、報告書の内容を自らの言葉として語ることはなかった。

室町正志氏
7月22日付けで取締役会長と代表執行役社長を兼務する室町正志氏

 新たな経営体制について、室町氏は「まったくの白紙。外部や指名委員会を通じて決めたい」とした。

 室町氏は、「多くの方々、資本市場に対してご迷惑をおかけしたことをお詫びする。第三者委員会設置後、今後の経営体制、ガバナンス体制と再発防止策などについては、独自に検討を続けてきたが、これとともに、第三者委員会の意見などをもとに、8月中旬に公表予定の新経営体制に反映させるとともに、9月開催予定の臨時株主総会で株主からの信認を受けた新経営体制のもとで、再発防止策を確実に実施していくため、社外取締役4人と社外専門家のみで構成される経営刷新委員会を新設することにした」と説明した。

 「今回の不適切な会計処理の発生原因については、経営トップによる関与が指摘されている。再発防止策については、経営トップなどの意識改革に加えて、強力な内部統制部門の新設、取締役会や監査委員会による監査機能の強化や、社外取締役の増員と構成員の見直しなど、監督体制の強化も提言をいただいている。取締役会の社外取締役を過半数とすることなどを含めて、ガバナンス体制について、慎重かつ迅速に検討する。今後は経営刷新委員会で第三者委員会からの提言内容を精査、検討した上で、内部統制システムとコンプライアンス体制の抜本的見直しを含む、再発防止策の具体的な内容を検討していく」(室町氏)

上田廣一氏
第三者委員会委員長を務めた上田廣一氏

企業風土に衝撃

 午後7時から開かれた第三者委員会の会見で委員長の上田廣一氏(元東京高等検察庁検事長)は「今回、報告書で『不適切』な会計と表現したのは、何をもって不正なのかいうことにも影響する。担当者が会計知識を間違えていたり、先送りすることが違法だとは思っていなかったり、半導体の在庫評価のように自分たちに違法の認識がないといったこともあった」と説明した。

 上田氏はまた「個別にみると不正といえなくないものもあるが、全体として不適切であると判断した。粉飾決算にあたるかどうかという観点では調査しておらず、粉飾という点では断定的なことはいえない」と解説。「室町氏は、こうした不適切な会計に関与していなかったと判断している」と述べた。

 上田氏は、「社内で『当期利益至上主義』と呼ぶ、最初に掲げた目標を達成しなくてはならないという企業風土があった。日本を代表する企業が、こうした不適切な会計を組織的にやっていたことに衝撃を受けた」と語った。

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