ここまで紹介してきたように、DJIは主力モデル「Phantom」シリーズ、そして「Inspire1」で市場を席巻してきたといえる。しかし、市場とは競争が存在するのが常だ。“Phantomキラー”と言われる、Phantomより低価格で高性能なドローンが次々と市場に投入される見込みで、DJIは次の一手を考える必要がある。
DJIの戦略を聞くため、筆者は何度か深センのDJI本社にコンタクトを取ろうと試みたが、広報担当者が多忙なためか連絡が返ってきたことはない。しかし、幸運なことにシンガポールでこのほど開催された「UAV SHow Asia 2015」でDJIのスタッフに話を聞くことができた。
「次に狙うのはB2B市場」とのことだ。もちろん、好調な消費者向け市場では「Phantom」や「Inspire」シリーズの新モデルを投入し、市場シェアを維持していくという。
連載第1回目でも述べたように、B2B向けでは、農業、石油・ガスのパイプライン敷設、採掘、インフラ、セキュリティ分野でのドローン利用が増える見込みだ。
B2B市場展開の布石としてDJIはこのほど、開発者向けドローン「Matrice100」をローンチしている。DJIがMatrice100を“フライトプラットフォーム”と呼んでいることから、このプラットフォーム上にさまざまな専用アプリを搭載し、産業分野での利用を増やしていこうという狙いが読み取れる。実際、すでに計測機器やサーモグラフィなどを搭載して利用しているケースもあるという。
中国・上海の復旦大学では、Matrice100を活用し、深刻化する交通渋滞などの都市問題を解決しようと試みている。現在は、Matrice100に違法駐車を見つけるシステムを搭載し、街を巡回させ、駐車違反車を見つけると、その車のナンバープレートの写真を撮影し、そのデータを送信する仕組みを開発中だ。もし、上海市全体の違法駐車をMatrice100で巡回させるとなると、数十台の購入につながる可能性も十分にある。DJIにとって非常に魅力のある市場なのは間違いない。
しかし、B2B市場ではすでに先行者がおり、そう簡単にはいかないかもしれない。また消費者向け市場でもPhantomキラーの登場で、厳しい競争を強いられることになるだろう。DJIを追い上げる競合企業については、次回以降に紹介したい。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)