日本で「ドローン(UAV、Unmaned Aerial Vehicle)」というと、首相官邸に落ちた危険なものとして想起されることが多いかもしれない。公園などで気軽に飛ばせないという現状が、日本社会におけるドローンへの警戒心を示しているようにも思える。
しかし、世界の動向に目を向けるとドローン市場が一大産業となるべく着実に拡大していることがはっきりとわかる。そこで、連載第1回目は、市場規模や主要プレーヤーの一部を紹介しながら、世界のドローン市場を取り巻く現状を俯瞰してみたい。
ドローン市場の規模はどれくらいなのか。市場レポートによりまちまちだが、共通の予測としては今後急速に伸びるということだ。
Markets and Marketsは世界の商業用ドローン市場について年率109.3%で伸び、2020年までに12億7000万ドルになると見込んでいる。一方で、IDTechExは2025年までに45億ドルと予想。Market research Internationalは2014年時点で6億900万ドルだった市場規模が2021年までに48億ドルに拡大すると予想している。
レポートによって市場規模の予測にバラつきがあるのは、各社が売上高や販売台数を公開していないからだ。商業用ドローンという分類の中に、消費者向けドローンも含まれる場合もあるという指摘もある。
Kickstarterなどのクラウドファンディングで資金調達し、開発を進める企業などを含めると多数存在するが、現時点の主要ドローンメーカーは、中国・深センのDJI、仏Parrot、WIREDの元編集長クリス・アンダーソン氏が率いる米3DRoboticsなどだ。
Dronelife.comがインターネット上の公開情報などをもとにこれら主要メーカーの消費者向けドローンの売上高と販売台数をまとめている。
それによると、商業用ドローンの世界シェアの大半を占めるといわているDJIの売上高は、2011年の420万ドルから2013年の1億3000万ドルに跳ね上がっている。2013年に同社のフラッグシップモデルである「Phantom」を販売開始。Phantomを発売する前の2012年でも売上高は前年比2倍に伸びているが、2013年にはPhantomが約11万7400台売れたことで売上高は爆発的に増加した。
The Vergeが報じたところでは、DJIの2014年の売上高は5億ドルに達したという。この推定からDronelife.comは2014年のDJIのドローン販売台数を41万6000台と推測している。
DJIは2014年末に4Kカメラを搭載した「Inspire1」、そして2015年に同じく4Kカメラ搭載の「Phantom3」を発売している。これらの新モデルが登場したことで、2015年だけで販売台数は50万台に達し、売上高は10億ドルとなる可能性もあるという。筆者の住むシンガポールでは「Phantom3」は予約購入以外での入手が非常に困難だった。この好調な売れ行きを目の当たりにすると、現実味のある予測値といえる。
Parrotの2013年の売上高は推定5335万ドル、販売台数は推定18万台だ。2014年には売上高が3倍増加したといわれており、ここから販売台数は54万台になったと予測できるという。
3DRoboticsの2013年5月の発表によると、2012年の売上高は500万ドルだったという。また、この時点で、少なくとも販売数は毎年2倍増で推移すると見込んでいた。この見込みなどからDronelife.comは同社の販売台数を2014年は推定2万7000台、2015年は4万6000台と予測している。
ドローン市場はまだ立ち上がりの段階で、状況はめまぐるしく変化しており、市場全体を正確に把握することは難しいというのが正直なところだ。ただ確かなのは、市場全体が盛り上がっており、当面はこの状況が続くということだろう。
それを端的に示すのが、米シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル(VC)、アクセル・パートナーズがDJIに7500万ドルを出資するというニュースだ。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、この出資額はDJIの株式総額を約80億ドル(約9600万億円)で評価したことなり、同VCの投資の中で最大規模のものになるという。
またこの発表の1週間後に、DJIとアクセル・パートナーズが、ドローン関連ベンチャー企業向けのファンド「SkyFund」を設立したこともドローン産業への期待の表れといっていいだろう。このファンドは、2社が500万ドルずつを出し合い、アーリーステージの企業に最低25万ドルを出資する。
主な投資対象となるのは、(1)ロボティクス・インテリジェントマシーン、(2)産業向けアプリケーション・クラウドサービス、(3)UAVオペレーション・サービス・サポート、(4)ハードウェア・コンポーネント・バッテリーテクノロジ、(5)ナビゲーション・障害物回避・コンピュータビジョン、(6)マルチメディア/動画サービス・コミュニティの6分野。
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