警察庁の「平成26年中の出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について」によると、出会い系サイトに起因する事犯の被害児童は152人で前年比−4.4%だった。一方、コミュニティサイトに起因する事犯の被害児童は1421人で前年比9.9%だった。
コミュニティサイトとは、プロフィールサイト(プロフ)、ブログ、SNSなどを指す。コミュニケーションが取れるゲームサイトなども含まれる。2008年の出会い系サイト規制法の法改正以後、出会い系サイトによる被害は減少傾向にある。コミュニティサイトにおける被害はそれ以来増え続けていたが、運営事業者の努力により2010年をピークに減少傾向にあった。
ところが、2012年より10代のスマートフォンの所持率が増加し、LINEなどの無料通話アプリが一気に普及。その影響で、2013年以降、非公式のLINE ID交換掲示板による出会い系被害が大幅に増えているのだ。グラフを見れば分かるとおり、「コミュニティサイト:LINE ID交換掲示板 = 2:1」くらいまでに差は縮まっている。
なお、出会い系サイトで被害に遭う児童よりコミュニティサイトで被害に遭う児童の方が低年齢層の割合が高く、9割弱がスマートフォンを通して被害に遭っていることが分かっている。
2007年、青森県八戸で女子高生(16)がモバゲータウン(現Mobage)で出会った30歳の男に殺された。規制された出会い系サイトに代わり、GREE、mixiなどに出会い系目的の成人が入り込んできたのだ。そこで、各運営会社はネットパトロールを開始。巡回や通報、監視システムで集めた投稿のうちグレーなものを目視でチェックし、出会い系を目的としたものであれば削除の上、警告・強制退会処分にしている。
大人と児童生徒を分けるゾーニングも行われている。たとえばMobageでは、18歳未満のユーザーは年齢が2歳以上離れたユーザーを検索できず、3歳以上離れたユーザーとはミニメールができない。また、成人ユーザーは18歳未満のユーザーを検索したり、ミニメールをやり取りしたりできないようになっている。
制限前のコミュニティサイトでは、確かに普通の中高生がやり取りして出会っていた。埼玉県の高校生に、岐阜県の女子高校生とモバゲータウンで出会って付き合って別れた話を聞いたことがある。ゲームを通して親しくなり、付き合うことになったのだそうだ。モバゲータウンがなければそのような遠距離在住の高校生同士が出会うことはなかったのは確かだ。
しかし、その後の制限により、コミュニティサイトで電話番号やメールアドレスなどを交換することは実質不可能となった。一般的なコミュニティサイトでの出会いは難しくなり、健全化が進んでいる。
ではなぜ、LINEを中心とした無料通話アプリでの出会い系被害が増えているのだろうか。それには、LINEの機能や使われ方が影響している。
先ほど説明したように、他のコミュニティサイトでは、友だちとしてつながっても、連絡先の交換はかなり難しい。一方LINEは、友だちとしてつながるだけでトークの送受信、画像や動画のやりとりのほか、通話までできてしまう。つまり、出会うために改めて連絡先を交換する必要はなく、ただLINEでつながりさえすればいいのだ。他のコミュニティサイトとの最大の違いと危険な理由はここにあると言えるだろう。
実はLINEでも、ID交換掲示板を使った面識がない異性との出会いや交際を目的とする利用は規約で禁止されている。IDをID交換掲示板などに掲載すると、LINEアカウントが利用停止、削除処分などを受けることになる。そこでユーザーは監視の目をかいくぐるため、掲示板に「○○○AのAを抜いてね」「×××の頭に5をつけてね」などと書き込んでいたりする。
LINEでは青少年保護を目的として、2013年秋より18歳未満はID検索機能が制限されるようになった。LINEでは友だちになるには、電話番号などで自動追加する以外に、ID、ふるふる、QRコードなどの方法がある。そこで未成年は、QRコードを利用して友だちの募集や追加をしている。この機能なら、未成年でも利用できてしまうためだ。ID交換掲示板では、このQRコードも多く利用されている。
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