数カ月前から予約していたコンサートに急用で行けなくなってしまった――こういう時、購入していたチケットはどうするか。すぐに浮かぶのは友人に譲ったり、金券ショップやネットオークションで販売することだ。ただし、中には諦めてそのまま捨ててしまう人もいるだろう。
この一方で、販売が終了したチケットが欲しい人は、同じく金券ショップで買ったり、ネットオークションで探したりする。しかし、金券ショップでは通常の倍近い値段で売られていることも珍しくないし、ネットオークションでは「送金したのにチケットが届かない」といった詐欺に遭う可能性もある。会場付近にいる“ダフ屋”にいたっては完全に違法販売だ。
なぜ、チケットは安心して売買できないのか。それはスポーツやイベントの主催者がチケットの「定価」を維持するために、転売や譲渡を認めていないためだ。また原則チケットの払い戻しには応じないため、購入後に行けなくなった人は不安を感じつつもネットオークションなどで販売するか、そのまま泣き寝入りするしかない。
こうした現状について、チケットストリート代表取締役会長の西山圭氏は「あくまでも興行主側の都合であって、ファンのためではない」と指摘。興行主がチケット売買を“公認化”し、健全な形でチケットの二次流通市場を拡大すべきだと語る。
同社が2011年11月から運営する「チケットストリート」は、ライブやエンターテインメント、スポーツなどの興行チケットを個人間などで売買できるマーケットプレイス。2014年8月時点の取引総数は6万件以上で、月間取引高は1億円に及ぶ。また、コンサートやスポーツ、演劇など約800公演、1万3000枚以上のチケットが常時出品されているという。当然ながら営利目的での販売は禁止している。
サービスの強みは、ユーザーが“安心・安全”にチケットを売買できること。売り手には銀行口座と身分証明書による2つの本人確認を義務化している。また、公演4日前までにチケットが届かなかったり、出品時と異なるチケットが届いた場合には、振込手数料も含めて全額返金している。
さらに、チケット価格の10%(税別)を上乗せしてオプションの「安心プラス」を付加すれば、同社が仲介してお互いの住所氏名を明かさずに取引できるほか、公演が中止や延期になった際にも返金に対応する。5月にポール・マッカートニー氏の来日公演が中止になったことは記憶に新しいが、この際には約240万円もの払い戻しを実施したそうだ。
2014年に入ってから相次いで提携も発表した。1月に「モバオク」、3月に「ヤフオク!」、5月に「楽天オークション」と出品チケットのデータ連携を開始。また、8月には「Yahoo!ショッピング」にも出店するなど、サービスの提供範囲を広げてきた。
チケットの二次流通市場の拡大に努めてきたチケットストリート。同社にとって大きな転機となったのが、2月に日本初となる“主催者公認”のサービスとしてNBL(日本バスケットボールリーグ)に選ばれたことだ。公認になるとどのようなメリットがあるのか。西山氏によれば、ユーザーだけでなく興行主もさまざまな恩恵が受けられるようになるという。
特に分かりやすいのがスポーツの試合だ。たとえば、プレーオフでは「前売りチケットを購入したのに応援しているチームが負けてしまい、出場がなくなってしまった」ということもあり、買い手にとってチケットが無駄になるリスクもある。しかし、公認でチケットを売買できるのであれば、事前に買ってもいいと考える人はいるだろう。一方で、勝ち進んだチームのファンは、 敗れたチームのファンが不要になって出品した良席チケットを安心して購入できるというわけだ。
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