シャープは5月14日、2015年3月期通期の連結業績を発表した。液晶テレビ、中小型液晶などの競争激化などを受け、売上高は前年比4.8%減の2兆7862億円、営業利益は480億円の赤字になった。経常利益は965億円の赤字、当期純利益は構造改革に伴う特別損失の追加計上などもあり、2223億円の大幅赤字になる。あわせて国内における3500人規模の希望退職を実施するほか、大阪本社の売却など、新たな固定費削減策を発表した。
シャープ代表取締役社長である高橋興三氏は「2014年度は後半に入り、厳しさを増した。2015~2017年度にかけての中期経営計画では、抜本的な構造改革を行い、安定的収益基盤の構築を目指す。復活に向けた再スタートを切りたいと思っている」と話す。
シャープが中期経営計画の基本戦略に掲げるのは
の3つ。事業ポートフォリオの再構築では、現行2つのビジネスグループと8つの事業本部に分かれている組織を5つのカンパニー制へと変更。「各カンパニーが自立した経営を行うこと。コーポレートはカンパニーに対する統制をきかせ、全社でスピード経営を目指すこと」(高橋氏)を主眼に置く。
液晶テレビ事業などを含む「コンシューマーエレクトロニクス」カンパニーでは欧州、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドにおいてはテレビ事業の終息、米州についてはアライアンスの検討を実施。日本、アジアへリソースを集中する。
高橋氏は「テレビ事業は地域によっては縮小あるいは手放しつつあるが、日本やアジアにおいてはこれからも力を入れていく。シャープでは白物家電をネットにつなげ、IoTを推進する方向で動いているが、その中でもディスプレイは必要になってくる。国内おいてはある程度のシェアも持っており、それを活かしていきたい。テレビの終息は考えていない」と説明した。一部報道にあった栃木県矢板市の栃木工場の閉鎖については「現時点では考えていない」と明言した。
一方、2015年3月期第2四半期から黒字基調へと転換した「電子デバイスカンパニー」については、「2014年3月期第4四半期に赤字となったが、即座に構造改革に着手することで、黒字転換を実現。スマートフォンカメラの業界ではトップシェアを維持している。今後は新規顧客への販売拡大を実施し、2017年度には2014年度比で約3倍の売り上げを目指す」と、構造改革の効果が着実に出ていることを強調した。
大阪・阿倍野区に構える本社売却を含む固定費削減については「現時点で移転先などは決まっていないが、もはや聖域はないというのが私どもの考え。本社を移転することによってキャッシュが入ってくるので、経営には貢献できる。本社を売却してでも構造改革を遂行したいという強い意志と考えてほしい」(高橋氏)と話す。
具体的な施策としては、グローバル人員の10%程度、うち国内希望退職3500人程度の人員削減、本社のスリム化、本社の売却、事業構造・拠点改革の推進のほか、緊急人件費対策として、役員に加え従業員も対象とした給与削減、賞与カットなどを実施する。
組織・ガバナンスの再編・強化では、先のカンパニー制を10月1日から実施。「再生の鍵はやはり人材が握っている」(高橋氏)との思いのもと、年齢、国籍、性別などにかかわらない実力ベースの人材登用を徹底する抜本的な人事改革にも取り組むとしている。
また、6月に現代表取締役兼副社長執行役員技術担当の水嶋繁光氏を取締役会長に、現代表取締役兼副社長執行役員コーポレート統括本部長兼グローバル事業推進担当の大西徹夫氏を副社長執行役員に変更する人事を行い、経営体制を刷新することも明らかにした。
シャープでは2016年3月期の連結業績を、売上高で前年比2兆8000億円、営業利益で800億円と予想する。
当期純利益大幅赤字となった2015年3月期の連結業績を受け、高橋氏は「2017年度までにおける中期経営計画は私が中心となって策定した。これを遂行していくことが私の経営責任の取り方と考えている。途中で投げ出すわけにはいかない」と思いを話した。
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