社会人向けビジネススクールのグロービス経営大学院は、4月にオンラインで大学院の全カリキュラムを受講できる「オンラインMBA」の本科プログラムを開講した。
グロービスは全国で東京、大阪、名古屋、仙台、福岡の5拠点にキャンパスを持ち、一方的な講義形式ではなく受講生同士のディスカッションを通じてビジネスリーダーとしての資質や人的ネットワークの構築を促すことを教育方針としてきた。オンライン教育においても、こうした教育方針を貫けるのか、どのように実現しようとしているのか。グロービス経営大学院学長の堀義人氏と、オンラインMBA責任者の荒木博行氏に聞いた。
堀氏 : グロービスでは以前からオンラインによる教育の可能性を模索してきましたが、グロービスがこだわってきたディスカッション形式による学びの場の創造をオンラインで実現するのは難しいという状況が長く続いていました。電子テキストを配布して講義を動画で配信するMOOC(Massive Open Online Course)型のオンライン教育では、授業が一方通行になってしまい、グロービスが目指す教育が実現できないと考えていたのです。
しかし、テクノロジの進化とネットワークの大容量化によって、そういった状況が変化しました。ウェブカメラを通じて受講生が顔を見ながら授業に参加することができるウェブ会議の仕組みによって、双方向で受講生がディスカッションに参加できるSPOC(Small Private Online Courses)型の授業ができるのではないかと考えたのです。
ウェブ会議によって授業に参加する受講生全員でディスカッションできる環境をネット上でバーチャルに生み出すことで、リアルな通学型授業と同じ学習体験を実現できる可能性が出てきました。そこで、さっそく私自身が教壇に立ち、在校生を対象にトライアルの講義を行ったところ評判がたいへん良く、教える側もリアルな授業と同じ手ごたえを得ることができました。画面に生徒一人ひとりの顔がアップになることで、教室よりも生徒が近くにいるように感じ、画面上でのテキストチャットも効果的に機能することを確認しました。2014年の4月から7月のことです。
PC上にディスカッションの場を作り出すことができれば、電子テキストを配布したり、講義を動画で配信したりすることが大きな意味を帯びてきます。テキストをどこでも閲覧でき、動画で何度でも講義を見直せるようにすれば、受講生は十分な予習・復習ができるようになり、授業時間はディスカッションに集中できるようになります。
堀氏 : オンラインMBAの一番の目的は、教育格差を解消して学びの機会を誰にでも平等に提供できるようにすることです。グロービスはこれまでに東京、大阪、名古屋、仙台、福岡にキャンパスを作ってきましたが、全国津々浦々までカバーできるわけではありません。長い時間をかけて苦労して通学している学生も少なくありません。
その志の高さは素晴らしいですし、有り難いことですが、学びに使える時間を通学の手間で削っているとしたら大変惜しいことです。また、育児で通学が困難な女性や、出張や転勤といった仕事の都合で継続的な通学が困難な方など、グロービスで学びたいのに学びの機会を得られないという声もよく聞きます。そういった方々に、“場所の制約”を取り払うことで、意欲がある方なら誰でも学べるようにすることが、オンラインMBAの使命だと考えています。
この4月よりオンラインMBAの本科生が入学しましたが、その過半数が東京以外からの受講です。韓国、シンガポール、米国など世界各国からの受講生が集まっています。今後は、英語による講義も開始し、国境を越えて学びの機会を提供するプラットフォームにしていきます。ちなみに、通学型の授業とは単位互換性があるため、オンライン授業と通学型授業を組み合わせてMBAを取得することも可能です。
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