logo

金融大手クレディ・スイスがプライベートバンキングアプリを提供へ--あえてアジアを選ぶ理由

細谷元(編集協力:岡徳之)2015年05月08日 10時00分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 スイス金融大手クレディ・スイスはこのほど、シンガポールのプライベートバンキング顧客向けのアプリを発表した。オンライン上で証券や外為の取引ができるほか、リレーションシップ・マネジャ(RM)に直接問い合わせができる。まずはシンガポールで提供が開始される予定で、2015年中に他のアジア諸国でも利用できるようになる。スイス、米国、欧州で利用できるようになるのは2016年からとのことだ。


クレディ・スイスのアプリ紹介ウェブページ

 ここで、なぜスイスの金融機関がまず自国ではなくアジア太平洋でアプリを提供するのか、という疑問が残るかもしれない。その背景には、アジア太平洋地域における富裕層の急速な拡大、そして富裕層向けサービス人材の不足という2つの要因が見て取れる。

急速に発展するアジア新興国、経済発展に伴い富裕層も拡大

 仏コンサルティング会社キャップジェミニとカナダの大手銀行ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)の資産運用部門RBCウェルス・マネジメントは、2014年6月に発表したレポートで、アジア太平洋地域の資産額100万米ドル以上の富裕層が2014年中に北米を抜く見通しと報告している。また、資産額も2015年中にアジア太平洋が北米を超えると指摘している。

 同リポートによると、2014年時点の資産額100万米ドル以上の富裕層は世界全体で1370万人で、このうち北米には433万人、アジア太平洋地域に432万人いるとされる。富裕層の増加率は、アジア太平洋の方が高いという。資産額は世界全体で52兆6000億米ドル、このうち北米が14兆9000億米ドル、アジア太平洋が14兆2000億米ドルだ。

 また英紙エコノミストが2015年4月に発表した調査では、資産額20万~200万米ドルを保有する「新興富裕層」がアジア太平洋地域で拡大すると指摘した。この調査は、2020年までに資産額が大きく増加する上位5カ国をインド(伸び率47.4%)、インドネシア(41.2%)、ベトナム(34.9%)、タイ(23.6%)、フィリピン(22.8%)と予想している。

テクノロジ投資を拡大するクレディ・スイス

 クレディ・スイス・アジア太平洋事業責任者のFrancois Monnet氏はシンガポール地元紙ストレーツ・タイムズの取材で、スイスを除いてシンガポールが世界最大のプライベートバンキングハブになっていると指摘。またアジア太平洋地域の富裕層の拡大で、域内における資産運用需要が高まっていると説明した。

 同氏によると、2014年末時点のアジア太平洋地域におけるクレディ・スイスの運用資産額は前年比24%増の1982億シンガポールドルで、これを約500人のRMが担当している。

 シンガポール拠点はクレディ・スイスの中で最もテクノロジインフラが整った拠点の一つ。プライベートバンキング部門におけるテクノロジ投資額は過去3年で約2倍となった。さらには、2014年に開始された新プロジェクトでは約200人が関わっているという。

 クレディ・スイスが今回発表したアプリの機能詳細を見ていきたい。まずメイン項目「My Portfolio」では、資産総額を見ることができるほか、ポートフォリオ別に現在のリターンを確認することができる。また取引履歴を表示することも可能だ。


プライベートバンキングアプリのメイン画面

 注目したいのは、「Ideas」と「Collaboration」の項目だ。Ideasでは、クレディ・スイスが発表している各種調査のほか、主要な情報誌を閲覧することができる。これにより、自分で投資対象を分析し、投資の可否を決めることが可能だ。

 自分で投資決定が難しいと感じた場合、Collaborationで担当のRMに連絡を取ることができる。連絡方法は、インスタントメッセージのほか、電話やビデオ通話がある。また、スクリーン共有を選択することができ、RMからアドバイスをもらいながら投資判断を下すことが可能だ。アプリは今のところiPad向けのみだが、iOSやAndroidのほか、PCでも利用できるようになるとのこと。

 シンガポール国内最大手のDBS銀行も金融サービスのデジタル化を進めるなど、金融とテクノロジの融合は着実に進んでいる。今後の展開に注目したい。

-PR-企画特集