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Dropboxの創業者が語る成功のポイントと戦略--完璧な条件が揃うまで待たないこと

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 業界の起業家、イノベーター、ベンチャーキャピタリストらが集い、最新のビジネストレンドを披露するカンファレンス「新経済サミット2015」が4月7~8日の2日間の日程で開催された。7日、Dropbox共同設立者兼CEOのドリュー・ヒューストン氏を招いた基調講演が行われた。

 オンラインストレージサービス「Dropbox」の共同創業者でCEOを務めるヒューストン氏。2006年にマサチューセッツ工科大学(MIT)で電気工学とコンピュータ・サイエンスの学士号を取得し、2007年にMITの同窓生であるアラシュ・フェルドーシ氏とともにDropboxを設立してサービスを開始した。

 Dropboxは、専用のフォルダにファイルをドラッグ&ドロップするだけで、データの共有・同期ができるオンラインストレージサービスとして、いまや全世界に多くの利用者を持つ。これまでの功績から、ヒューストン氏はFortune誌の「40歳以下の注目すべき40人」に選ばれたほか、フェルドーシ氏とともにTechCrunchの「Founders of the Year」(年間創業者賞)にも選出されている世界でも名だたる若き起業家の1人だ。

 日本に関しては、2011年4月にはDropboxが日本語に正式対応し、今回の基調講演に登壇する直前には、ソフトバンクコマース&サービス(ソフトバンクC&S)との業務提携し、日本企業向けに「ビジネス向けDropbox」の販売を開始すると発表した。

 今回の基調講演では、創業以来、急成長を遂げるDropboxの創業者であるヒューストン氏を招いて、「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」日本版編集長の西山誠慈氏が聞き手となり、Dropboxの創業から現在までの歩みや成功のポイントや戦略、日本の起業家に向けてのアドバイスなどを聞いた。

 まずは、2014年秋に日本に事務所を開設し、基調講演当日の朝にソフトバンクC&Sとのパートナーシップを発表したDropbox。ヒューストン氏は日本市場や日本のユーザーについて次のように見ている。

早い段階から日本に注目していた理由

 「Dropboxでは早い段階から日本に注目していた。なぜならテクノロジを愛する人たちが多いから。日本の人たちはモバイルを活用し、多くのデバイスを使っている。そして、数字を見ていて興味深いのは、日本のユーザーの中でも活発にDropboxを使っている人たちは、より多くのファイルを格納しており、米国のユーザーの平均以上に日本のユーザーのほうが活発に使っていることがわかっている。つまりそれはプロダクトとして有償で使っている人が多いということで、中堅的な中小企業のビジネスにもDropboxは向いていると考えている」

 オンラインストレージサービス市場で、急成長を続けているDropboxだが、Googleやアップルといった大手のプレイヤーと肩を並べて戦わなければならない状況の中、他社との差別化を図るために注力しているポイントは“ユーザーエクスペリエンス”とヒューストン氏は話す。

 「われわれの取り組み方としては、Dropboxにユーザーが何かを格納した場合に、どんな行動をしているかということを見ている。実際、多くのユーザーが単にバックアップするだけではなく、それらを共有するために利用しているとわかっている。そこでわれわれは、どうやったらデータを全部まとめた上で情報を役立てられるか、人々が心配せずにあらゆるデバイスで対応することができるかといったユーザーエクスペリエンスがわれわれがフォーカスしている対象で、それが差別化のポイント」。

Dropbox共同設立者兼CEOのドリュー・ヒューストン
Dropbox共同設立者兼CEOのドリュー・ヒューストン

 一方、新興のベンチャー企業に対する対峙の仕方について、次のような考えを明かした。

 「企業づくりというのは、単にプロダクトをつくるだけではなく、インフラというのも必要。どうやって多くのユーザーに対して展開することができるか、ビジネスモデルをどうつくっていくか、どのように資金調達をするかといったことを考える必要がある。そこでわれわれとしては、いろいろなパートナーシップを結ぶことで、素晴らしいベンチャー企業の創立者にDropboxに参加してもらっている。

 問題解決にスピードを要するものについては、われわれが買収することにより、他の企業の人たちに任せるということもある。Dropboxにプラグインするスタートアップ企業もたくさんあり、サービスの創始者として、より活性化させることができればということで支援することもある。その企業が必ずしも成功しているからといって買収するわけではない」と述べ、ユーザーエクスペリエンスの向上に寄与した考えであることを強調した。

情報はクラウド上にあったほうが安全なケースもある

 また昨今、機密情報など情報漏えいの問題などが度々議論されている中、オンラインストレージにおけるセキュリティについては次のような見解を語った。

 「クラウドにデータを持っていたほうがより安全であるということが最近わかってきた。例えば以前は現金はすべてたんす預金だったような時代もあったが、やがて時代が変わるにつれて銀行に預けたほうが安心という時代がやってきたのと同じようなこと。もちろん、これまでマスコミでも大きく取り上げられたセキュリティが問題になった重大事件というのはいくつかあったが、われわれのビジネスというのは信頼に基づいているもの。だからこそセキュリティに大きく投資を行い、セキュリティに関する多くの有能な人材を集めて対処することができるといった考え方もできる。

 セキュリティに関する関心は日本は特に高い国と感じている。しかし、新しい技術を導入する際には総じて懸念というのが必ずついてまわるもの。USBのストレージを使ったほうがよほどセキュリティはぜい弱だったりもするもの。例えば企業のインフラそのものが攻撃を受けてしまった場合には、情報がクラウド上にあったほうが安全であるということを、時間はかかるだろうが、やがて誰もが納得すると思う」

 一方、若き起業家として早くから注目を集めてきた自身の過去の経験を踏まえて、世界を目指す日本の若き起業家に対しては次のようにアドバイスを送った。

 「出発点は本当に執着できることを見つけられるかということ。もちろん、つねに楽しいことばかりではなく、いろいろと努力をして問題を解決しなければならないが、やっていることが本当に好きであればこそ。Dropboxのアイデアの源はUSBメモリにデータを持ち歩くのが嫌だという自分自身の問題を解決するためのものだったが、いまや何億人もの人たちの重要な情報や問題解決をどうやってできるかを考えるようになり、ミッションが変わってきた。

 それから、なるべく早く始めることも重要。完璧なアイデアや条件が揃うまで待たないこと。そして自分の向上心を促してくれるような人たちを周りに置くということ。最後に重要なのは読書。大学時代、100冊以上のビジネス書を読んだ。プログラミングの知識はあってどうやって開発すればいいかはある程度わかっていたが、セールス、マーケティング、マネージメントといったそれ以外の分野に関してはまったく知識がなかったので、とにかく本を読んだ」と語り、スタートアップ企業の経営者や起業を目指す来場者にエールを送った。

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