顔写真を公開したり、キス動画などを公開すると何が問題なのだろうか。個人情報を特定されたり、ストーカー被害や出会い系被害などにつながることも考えられる。しかしそれだけではなく、将来にも影響する可能性があるのだ。
ある保育士専門学校の話だ。教授がある女生徒のレポートに興味を持ち、何気なくネットで検索したところ、彼女が恋人とキスしている写真やお酒を飲んで醜態をさらした写真をSNSで公開しているのが見つかった。保育士専門学校には実習があり、保護者がそのような情報を見る可能性がある。万が一問題になれば、実習受け入れ拒否につながる可能性もある。結果、彼女は「校風に合わない」と専門学校を退学させられてしまったという。
人事採用担当者を対象に調査したJOBRASS就活ニュース2016によると、「応募者のSNSアカウント(Facebook、Twitterなど)をチェックしたことはありますか?」という問に対して、37.7%が「はい」と回答している。さらに、「SNSの投稿内容は重視していますか?」という問に対しては、19.8%が「重視している」と答えている。
同調査では、「面接の内容を事細かに書いていた」「ホテルのベッドでキスしている写真を投稿していた」「ネガティブすぎるつぶやきばかりだった」などの行為が問題視されている。共通するのは、公開すべきではない情報を誰からも見られる状態で公開してしまったことだ。デジタルデータは保存、コピー、転送、拡散が容易であり、自分に不利益なことを投稿すると取り返しがつかないことになりかねない。
目の前しか見えていない子どもたちには、なるべくこのような実際に起きた事件や被った被害を伝えるようにしている。自分の年齢に近い子がどのようなことをしてどんな被害を被ったのかを知ることで、情報を出し過ぎるリスクを実感できるようになると考えている。家庭でも、事件がある度に保護者が注意を喚起することが子どもの危機意識につながるはずだ。
自分の名前などで検索をかけることを「エゴサーチ」という。一度エゴサーチをかけてみると、思った以上に多くの情報が見つかることに驚くかもしれない。中には、自分ではなく友人など他人が出した情報も見つかるだろう。
「デジタルタトゥー」というが、ネットの情報は削除しない限り永遠に残ってしまう。そのような情報が将来自分の足を引っ張ることがないよう、公開すべきではない情報は公開せず、すでに公開してしまった情報は削除するようにしよう。
SNSの多くは誰もが見ることができる公の場だ。リアルの生活で公共の場での振る舞いを学ぶように、ネット上での公の場での振る舞いを学ぼう。ネットやSNSが普及した現代で学ぶべき新しいマナーといえるだろう。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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