日本損害保険協会が2014年11月に実施した調査で、日本全国で自動車盗難372件に対して損害保険が支払われたことが分かった。このうち盗難後に発見されていない車両数は290件にのぼり、一度盗難されると戻ってこないことが浮き彫りになった。ちなみに、県別で最も多かったのは愛知県で、111件と全国の3分の1近い数値となった。
これが安心の材料になるかは分からないが、一方で自動車盗難件数は2011年比で大幅に減っている。2011年の件数は683件なので、2014年は約半分に下がったことになる。その背景として、セキュリティシステムなどテクノロジの普及が盗難防止・抑止につながっているようだ。
海外でも同様にテクノロジなどの普及で、自動車盗難が激減している。アジア有数の先進国、シンガポールの警察の発表によると、過去5年の乗用車盗難件数が激減している。2014年に盗難にあった車両(バイク、商用車を含む)316台のうち、乗用車は21台にとどまった。2010年は全体で987台が盗難され、このうち85台が乗用車だった。2014年は2010年比で「4分の1以下」に減少したことになる。
日本よりも大幅に状況が改善しているように見受けられるが、どのようなテクノロジが活用されているのだろうか。盗難防止の意識をより高めるためにも、現地の事情をご紹介したい。
激減した要因は複数あると考えられるが、専門家らは駐車場の監視カメラや車内カメラが増加したことが抑止効果を生んでいるとみている。
もともと、消費者金融の違法な取り立てを取り締まる理由で監視カメラの導入が進んだが、結果として自動車盗難の抑止にもつながったようだ。2012年5月以来、国内の公団住宅3300棟と立体駐車場に約1万8000台の監視カメラが備え付けられた。今後、1万棟の公団住宅と立体駐車場すべてに監視カメラが設置される予定だ。
またシンガポール政府は「スマート国家」構想の一環で、国内中にセンサーネットワークを張り巡らせる取り組みを実施しており、セキュリティは今後さらに高まる可能性がある。道路上の監視カメラは新型デジタルカメラに取り替えられており、盗難車を見つけ出すのもこれまでに比べ容易になる。
監視カメラだけでなく、車内設置型セキュリティシステムの普及も自動車盗難大幅減の要因になっているという声もある。
シンガポールの自動車セキュリティ用品販売会社Advanced Auto SoundのSheng Quan氏は地元紙ストレーツ・タイムズ紙の取材で、「イモビライザー」搭載車が増えていることが乗用車盗難が大幅に減っている要因と指摘する。イモビライザーとは、電子キーによる照合でエンジンをかけるもの。電子キーを持たない者がエンジンをかけようとしても、エンジンはかからない仕組みになっている。
前述の日本損害保険協会の調査でも、イモビライザーの普及で盗難件数が減少したとみられる結果がでている。同調査の車種別で2007年から7年連続でワースト1位だったトヨタの「ハイエース」の被害が2013年の148件から2014年には40件に減少した。ハイエースは、2012年5月発売モデルからイモビライザーを標準装備しており、このことが盗難件数の減少につながったとみられている。
このようにイモビライザーなどのテクノロジの普及で、日本だけでなくシンガポールでも自動車盗難件数は減少傾向にある。しかし、シンガポールの専門家らは同国からマレーシアのジョホール州まで自動車で行く場合、現地での盗難に警戒すべきと注意を促している。マレーシアまで自動車で出かけ、昼食を食べている間に盗難に合うケースは珍しくないという。
さすがに自動車をそのまま持っていかれては、イモビライザーを搭載していても意味がない。日本でも引き続き、油断は禁物だ。
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