法人需要を狙いSIMフリー「Windows Phone」を国内投入へ--「freetel」の新戦略

 「freetel」ブランドでSIMフリーのスマートフォンを開発・販売しているプラスワン・マーケティングは、2月27日にWindows Phoneを国内で発売することを発表した。また、スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2015」(MWC)に出展し、海外でのスマートフォン販売を積極化させるなど新しい取り組みを実施している。同社代表取締役社長の増田薫氏に戦略を聞いた。


MWCブースで海外向けにスマートフォンをアピールする増田氏(左)と、取締役の大仲泰弘氏(右)

法人需要を狙いWindows Phoneを投入

 仮想移動体通信事業者(MVNO)の急増を受け、MVNOのSIMとセットで利用できるSIMフリーのスマートフォンが、最近注目を高めている。その先駆け的存在の1つとなっているのが、プラスワン・マーケティングだ。2012年に設立した同社は、「freetel」ブランドでSIMフリーのスマートフォンを投入。現在はスマートフォンだけでなく、タブレットやWi-Fiルータなど製品ラインアップの拡充を図っているほか、自らMVNOとなって通信サービス「freetel mobile」も展開している。

 そのプラスワン・マーケティングが、Windows Phoneを搭載したスマートフォンを2015年夏までに販売すると発表したことに加え、MWCに出展して海外進出を本格化させるなど、次々と新しい取り組みを打ち出している。

 特に国内向けの施策として注目されるのが、長く国内では見送られていたWindows Phone端末の投入を正式に発表したことだ。コードネーム「Ninja」と呼ばれるこの端末は、Windows Phone 8.1を採用した5インチディスプレイのスマートフォンで、デュアルコアのSnapdragon、1Gバイトのメモリ、8Gバイトのストレージを搭載したミドルクラスの端末となる。


Windows Phone 8.1搭載スマートフォンをMWC会場で展示。海外向けアピールのため「Ninja」というコードネームが付けられている

 端末数は当初1機種のみだが、「いずれはロー、ミドル、ハイの3機種を用意したい」と増田氏は話しており、ラインアップを拡充し販売を拡大していくことも検討しているようだ。

 しかし、なぜプラスワン・マーケティングはWindows Phoneを手掛けるに至ったのだろうか。増田氏によると、それは氏が以前、デルで携帯電話事業の責任者を務めていたことに起因するという。当時、増田氏は「企業のシステム担当者からすれば、OSは(PCと同じ)マイクロソフトに絞りたいだろうと考えていた」ことから、法人に強いWindowsと親和性の高い、Windows Phoneを採用したスマートフォンの開発を検討していたという。

 結果的にデルが携帯電話事業から撤退したため、Windows Phoneの採用は実現できなかったのだが、増田氏がデルを退社してプラスワン・マーケティングを設立した後も、Windows Phoneの採用を検討していたという。そして2014年にWindows Phoneのライセンス条件が緩和されたことを受け、ライセンス締結を進め今回の発表に至ったとのことだ。


「Ninja」の背面。8メガピクセルのカメラが搭載されている

 このような経緯があることから、同社がWindows Phoneで狙うのは、やはり法人向けのマーケットとなるようだ。まずはSIerと組んでソリューション主体に販売しようと考えているとのことで、Windows Phoneが法人向け専用の端末となるわけではなく、コンシューマ向けにも同じモデルを展開していくと、増田氏は話している。

 ただし、Windows Phoneは長く国内で提供されてこなかったことから、AndroidやiOSに比べ日本向けアプリの数が圧倒的に不足しているという大きな課題がある。この点について増田氏に聞いたところ、「開発者向けイベントでの端末貸し出しなど、ハード面でアプリ開発に向けたサポートも進めていきたい」と答えており、Windows Phoneを盛り上げるための取り組みも積極的に実施していく考えのようだ。

“Made in Japan”の品質で20カ国に進出する海外戦略

 そしてもう1つ、同社の新たな戦略として注目されるのが海外進出だ。増田氏によると、海外への展開は「設立当初から狙っていた」とのことで、MWC開催前にもアフリカと東南アジアの4カ国で話し合いを進め、すでに販売が決まっていたという。さらに今回のMWCでの出展によって、欧州や南米など他の地域を含めた、20カ国での販売に向けた動きが進んだとのことだ。

 提供する端末やOS、サービスは国によって変わるとのことで、価格帯も国によって1~3万前後と異なるという。ただし、海外でこの価格帯のスマートフォンの動向を見ると、中国メーカーなどが激しい価格競争を繰り広げており販売や収益面での不安も感じないわけではない。この点について増田氏は「正規のルートで販売されていない端末も多いが、そうしたものは相手にしていない。プライスとプロダクトが合っていれば売れるのではないか」と自信を見せた。


Android One端末も参考出展されており、国によっては日本向けと異なる端末を投入する可能性もあるようだ

 増田氏は、海外進出にあたりさまざまな国の人たちと話を進めたところ、どの国にも共通した事情があることが分かったと話す。それは「みんなスマートフォンが使いたい」ことで、音声通話だけでなくゲームやSNSなどのネットサービスを利用したいというニーズは、世界共通なのだという。

 そしてもう1つ、「毎日使うものなので、いいもの、かっこいいものを持ちたいというニーズも世界共通だ」と増田氏は話す。そうしたことから、プラスワン・マーケティングでは自社で開発している強みを“Made in Japan”品質として打ち出して訴求し、新興国へのアピールを進めているとのことだ。それゆえ正規のルート以外では扱わないよう販売店選びを慎重に進めるほか、サポートも外部に委託せず現地法人を立ち上げ、社内で実施するという。


MWCのプラスワン・マーケティングブースは、“Made in Japan”ブランドと外国人向けアピールを強く意識した、和風のブース展開となっている

 増田氏は「海外の人たちにとって、Made in Japanは非常に大きなブランドであり、我々の先輩たちが作り上げた大きな功績だ」と話し、日本を起点として事業展開していることに強いこだわりを見せた。その背景には、自身がこれまで外資系企業で働いてきた視点から、日本のもの作りの地位が低下していることに対する危機感があるという。

 「採算が合わないからといって日本のメーカーが海外に拠点を移したり、事業売却を進めたりしたことで優秀な技術者が海外に流れる一方、そうした技術者が外資系企業で使い捨てにされるのを何度も見てきた」(増田氏)。そうした危機感が、日本での開発にこだわった世界進出へのチャレンジへとつながっている。増田氏が強い想いをもって取り組む今回の施策が事業拡大の契機となるか、大いに注目されるところだ。


蒔絵をデザインしたスマートフォン「Samurai」も参考出展されていた

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