What's Ingress ?

「観光にピッタリと確信」--岩手県「Ingress」ムーブメントの仕掛け人

藤井涼 (編集部)2015年03月05日 13時00分
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 岩手県は2014年秋から、Googleの社内ベンチャーNiantic Labsが開発したスマートフォン向け陣取りゲーム「Ingress(イングレス)」を、町おこしに活用している。現実世界の建物やモニュメントがポータル(拠点)になっており、実際にその場に行かなければ奪えないという特性を生かして、県外から訪れるユーザーを増やしたい狙いがあるという。

 活動を始めたのは2014年9月。庁内の有志職員10人からなる「岩手県庁Ingress活用研究会」を発足した。当時はゲームの要であるポータルの少なさが課題だったことから、同年11月に日本初の自治体公式イベント「ポータル探して盛岡街歩き」を開催。当日は50人以上のユーザーが参加して候補地を探索し、多くのポータルが申請された。


「岩手県庁Ingress活用研究会」の発起人である保和衛氏

 この岩手県の取り組みにNiantic Labsが応え、数カ月はかかると言われるポータルの審査を優先的に実施。その結果、盛岡市内のポータルは急増し、現在は800カ所以上存在するという。2月14日には、この“ポータル大量発生”の感謝を込めて、第2弾のイベントを開催。初心者講座や名所巡りなど丸1日かけた大規模なイベントとなり、県内外から150人以上が参加するなど盛況だった。

 こうした活動を主導してきたのが、岩手県秘書広報室 副室長 兼 首席調査監の保和衛氏。なぜ、まだそれほとメジャーとは言えないIngressを、観光振興に使うことにしたのか。またその先に見据えるものは。2月14日のイベント後に聞いた。

他の自治体も同じことを考えると思った

――岩手県ではこれまでもネットを活用した取り組みをしていたのでしょうか。

 皆さんはあまりご存知ないかもしれませんが、岩手県のTwitterのフォロワー数は東京都を除けば自治体の中ではトップクラスです。また月に1度、ニコニコ生放送で知事が自ら出演して、岩手の情報を発信しています。若い人たちはあまり新聞やテレビを見ないですし、いまでは被災地の情報もほとんど目にしないと思いますが、ニコニコ生放送ではダイレクトに話が伝わりますし、視聴者と双方向でやりとりができます。復興の情報や旬な食べ物などいろいろな情報を発信しているので、ぜひ見ていただきたいですね。


「いわて希望チャンネル」

――なぜ、いち早く「Ingress」に注目したのでしょう。

 我々も最初から知っていたわけではなく、2014年8月に以前からお付き合いがあった吉岡さん(ゲームクリエイターの吉岡直人氏)から「こんなゲームがあるよ」と紹介してもらったことがきっかけです。私もIngressなんてまったく聞いたことがなかったのですが、せっかくなのでちょっとやってみたら「これはもう観光地巡りだ」と確信しました。

 ポータルには自分で歩いて行く必要がありますし、神社仏閣や有名なモニュメントがポータルになることが多いので、観光してもらうのにピッタリじゃないかと。それと同時に、他の自治体が気づけばみんな同じことを考えるだろうとも思いました。これは、もたもたしていたらあっちこっちで「うちはIngressで観光をやる」と言い始めると思ったので、何とか早くやりたいという思いで研究会を立ち上げました。

――庁内での理解は得られたのでしょうか。また研究会はどのようなメンバーで構成されていますか。

  • 「Ingress」

 一般的な行政の進め方だど、どこの課がやりますか、予算はどうしますかと決めたり準備したりするのに時間がかかってしまいます。また、ゲームと行政が結びついていいのかといった、公的な立場としての議論がいろいろと出てくると思いましたので、まずは“職員の自主的な研究”という形をとって、スピードを上げてスタートさせました。

 庁内の公募で集まったメンバーは、やはり40代以下の若い人が多いですね。ただ、彼らも興味はあったとは思いますが、その時点でIngressで遊んでいたかというとそうでもありませんでした。なので、私が研究会をやろうと思った時も、「分からなくてもいいから面白そうだと思ったらやってください」と声を掛けながら集めましたね。

――研究会として活動して気づいたことはありますか。

 最初は観光巡りということが一番頭にあったのですが、この活動を始めて盛岡市内をウロウロしてみると、自分でも知らないところがまだまだあるのだと気付かされました。県外からお客さんを呼ぶことも大事ですが、まずは地元の人たちがそこに気づいたら、自分たちの街に誇りを持てるのではないかと思いました。

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