このページの「平成25年度『国語に関する世論調査』の結果について」(PDF)というのが、今回話題となっている調査結果ですね。中を見てみると、確かに次のようなデータが載っています。
年齢層別に分けると、次のように、2002年と比べればどの年齢層でも不読率は上昇しているようです。
ただし、このグラフを見ると、「活字離れ(読書離れ)」の主役は藤原氏の示唆するような「若い人たち」ではなくて、むしろ60代、70代であることもわかります。
さて、このデータをどう解釈するべきでしょうか。この種の社会調査では、回答だけではなく、質問の「ワーディング(言葉の選択)」も重要だったりするのですが、報告書には“1か月に大体何冊くらい本を読んでいるかを尋ねた”とあるだけでした。
「本」といっても、いろいろありますよね。しかし、この調査だけでなく、読書についての調査のほとんどが、その定義を曖昧にしています(だいたい、「大体何冊」の「大体」ってどのくらいの数を指しているのでしょう?)。
このような調査に私が協力するとしたら、どんなことを考えるでしょうか。
「読書しましたか? だって。本と言っても、子どもの絵本もあれば、放送大学の教科書のようなのもあれば、英語の本もある。雑誌やムック、コミックは『本』に入るのかなあ……電子書籍や、オーディオブック、アプリ、メールとか、SNS、ブログ、ウェブサイトを見るのは、『読書』に入るんだろうか?……ええい、ままよ、適当に答えちゃえ!」
無数(無限?)の可能性があるのは、本の定義だけではありません。
「読む」という行動にだって、かなりの幅があります。パラパラと開いてみたことも、読むうちに入るのか、一字一字、最後まで読み終えたことを指すのか、辞書や参考書で調べ物をするのはどうなのか……などなど。
辞書や雑誌についていえば、一字一字、全ページ「読了」するなんて、かなりまれなことだと思うんですけど……。この場合、必要なところを読んだだけでは「読書」にならないのでしょうか。
こう考えると、クルマ離れと同じように、読むことの対象となるモノや行為の定義がはっきりしないと、曖昧な印象論しか語れないことになってしまいます。
出版界では、こういう「ふわっとした」議論が実に多いことは、これまでに何度か書きましたが、そのへんを刷新していこうというのが本連載の趣旨でもあるので、このままでは困ります。
少なくとも電子書籍が対象になっているかどうかくらいは、確認できないかなあ……とページをめくっていたら、そのものずばり、電子書籍を含んだ数字がありました。前掲のグラフに「電子書籍込み」の棒を足してみたのが、次の図です。
これを見ると、実は、「電子書籍を『読書』の対象に含めると、全年齢で不読率が増えるどころか、急減していることがわかる」のです。
全体の不読率の推移をまとめてみたのが、次の図です。
前述のとおり、一般的な読書に関する設問では、読書(不読)の「対象」が今ひとつはっきりしなかったのですが、電子書籍に関する設問では、きちんと明示されています。「紙の本、雑誌、漫画、電子書籍」を対象として、そのいずれも「読まない」と答えた人の割合を上記のグラフでは「不読率」にしています(赤のライン)。
青のラインは、前出の調査結果で、設問が異なるので、本当は同列に論じることはできないのですが、それでも、電子書籍を含むと、不読者は傾向的には減ってきている(読者は増えてきている)ようだ、ということは言えると思います。
なお「電子書籍」の定義も明示されています。同報告書にいう「電子書籍」とは、「雑誌や漫画も含む」とのことです。
同報告書には、年齢階層別の電子書籍利用のあり方をまとめたデータも載っています。次のグラフがそれです。
電子書籍を最も利用する16~30代で不読率が最も低く、電子書籍の利用率が最も低い60、70代で不読率が最も高いことがわかります。だとすると、これらのグラフから読み取れるのは、「電子書籍のおかげで、全体の不読率が下がった」ということではないでしょうか。
ところで、電子書籍を読む人の中にも、「絶対電子書籍じゃなきゃイヤ!」という人もいれば、「紙の本の方が好き」という人もいるはずです。紙と電子の「使い分け」はどうなっているのでしょう。こうした疑問に答えるのが、次のグラフです。
これを見ると、30代のほかに、50代でも「電子書籍派(紙の本より電子書籍を多く読む人たち)が目立ちますね。ちょっと意外な結果です。
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